子犬たちの中に一匹足の悪い犬がいます。

名前はラッキー。

皮肉に聞こえるかもしれませんが、私はお義母さんのネーミングセンスの良さに感心しました。

このラッキーですが、生まれつき足腰が弱く、立とうとするとまるでアイススケートの初心者のように足が外側に開いてしまって立ていられません。

自律神経系にも問題があるようで、歩こうとしても左側にバッタリ倒れてしまうし、常にプルプル小刻みに震えていて目の前の食べ物を食べることも上手くできません。

他の子はお母さん犬のミルクをもらいにお母さんにわぁ~っと群がるのですが、その子はもらいにいけないので全然成長出来ず、小さいまま、どんどん痩せていってしまいました。
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写真の下がラッキー。
同い年のブラウニーとこんなに体格差が出ました。

母犬はその子を見捨てるでもなく、特別扱いするでもなく、他の子と対等に扱っていました。

ただミルクは飲みにこないからと言って飲ませにいくというようなことはしないので、ラッキーはどんどん痩せ細っていきました。

人間だったら、そういう子がいたら特別扱いするでしょう。

母犬からしてみれば、他にも6匹の子犬を育てなければいけないし、自分の仕事をこなしているだけなわけで、自然なことなんですね。

感心するにはしますが、自然だろうがなんだろうが、こっちからしたら目の前で飢えてる子犬を捨ててはおけません。

ということで、哺乳瓶を買ってきて市販の子犬用ミルクを飲ませました。

最初は眠ってばかりで、食欲も全然なかったのですが、無理やりにでも飲ませるうちにみるみるうちにどんどん元気になっていきました。

最初は哺乳瓶をくわえることも出来ないし、身体もずっとヨタヨタしてるので頭と身体を押さえつけなければいけませんでしたが、だんだん自分の意思で哺乳瓶をくわえるようになり、私が通りかかるとミルクがもらえると思って鳴き始めるようになりました。
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そしてある日、歩き始めたのです。

これには感動しました。

子犬たちは犬小屋で飼っていますが、自分の寝床を汚したくないようで、みんな糞尿は外でします。

犬小屋には小さな段差があって、これがラッキーにはかなり高いハードルらしく越えられないのです。

中で自分の糞尿にまみれている時もあれば、転がるようにして外に出て排泄したものの、中に戻れなくてやはり自分の糞尿にまみれて転がりながら甲高い声で鳴き続けるのです。

夜中の2~3時にこれで数回起こされる毎日でした。

子供が生まれたらこんな風に夜中何度も起きるんだろうな~と思いながら糞尿の中で転がり回るラッキーの世話をしていたのです。

それが、よろけながらも自分の足で立って、小屋の外に出て、排泄してから又小屋に戻って行く姿を見た時は本当にうれしかったです。

そして毎日毎日日を追うごとに足腰が強くなってきて、ヨロヨロプルプルしながらも自分の行きたいところに行けるようになっていき、行動範囲が広がって行く姿を見るのは本当に感動的でした。

市販のミルクの栄養価の高さは凄いですね。

そして大事なことは生命力だったと思います。

私の旦那さん、レックの体験談ですが、前にも子犬が生まれた時に、一匹だけ元気がない子がいたそうです。

他の子より身体が小さく、沢山の兄弟とのご飯の取り合いに負け続け、生命力が枯渇していくのが眼に見えるかのようだったそうです。

それに気づいたレックはいつもその子の名前を呼んで遊んであげ続けました。

すると、レックになつきはじめ、そのうちどこに行くにもついてくるようになりました。

それと共に元気を取り戻し、小さい身体ながらも兄弟の中に混じってご飯を食べられるようになったそうです。

大切なことは生命力。

生への執着です。

ラッキーも私たちが名前を呼び続け、世話し続けることで、本当に元気になりました。

子犬たちは固形物も食べ始めましたが、ラッキーは上手く口に運べずにこぼしてしまうので、他の子に比べて一度に沢山食べられません。

その上、足がプルプルツルツルしているので、皆と並んで立ってご飯を食べるのが難しいです。

というわけで、一匹だけ餌を入れるお皿の中に入って食べることが人間に許されています。
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自然界には無い、人のエゴによる完全なるヒイキです^_^;

おかげでラッキーは誰よりも食欲旺盛で、他の子犬ともじゃれ合えるようになりました。

私を見ると、プルプルヨロヨロしながらも一目散に寄ってきます。

可愛くて仕方ありません。
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ラッキーは基本が弱いから、自然界の淘汰では真っ先に淘汰されてしまう存在でしょう。

自然の摂理は見方によれば、残酷にも写ります。

人間のエゴが介入することでこの自然のサイクルに変化を与えているということを考えさせらるような出来事です。

とにかくラッキー、元気に育って長生きしてくれ!
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