お酒で思い出されるのはイギリスの学校です。

イギリスの演劇学校に通っていた時。

アル中の役を与えられて、役作りに悩み苦しんだ私が何をしたかというと、自分の発表前に下のバーで酒を浴びるように飲んでから発表したのでした。

先生からは真に迫る演技だと大絶賛されたものです。

イギリスではクリスマスの時期に、クリスマスパントと呼ばれるおとぎ話のパロディ芝居を子供向けに上演します。

ピーターパンや白雪姫をパロって子供が大好きなジョークをいっぱい取り入れて、最後は敵も味方もみんな仲良しになって大団円みたいな楽しい芝居です。

我が演劇学校でもクリスマスパントを行ったのですが、その時の演目が「白雪姫」。

白雪姫の候補には2人の名前が挙げられました。

1人は黒人のシャナ。

黒人の白雪姫という出オチです。

そして、もう1人はなんと私。

そうです。

アル中の白雪姫。

前回のアル中の役が真に迫っていたために、こんな大役を射止めてしまったのです。

あれは実は酒の力を借りてたんです~と、いまさら言えずに、私とシャナへの投票が始まり、結果なんとアル中の白雪姫を上演することが決定しました。

本番直前、また下のバーにお世話になったのは言うまでもありません。

極度の緊張と酒の高揚で白目が真っ赤に染め上がり、異様な形相の白雪姫でしたが、結果は大成功でした。

酒の力は本当に凄い。

全く緊張せずに、怖れがないから本来の力以上の力が発揮できました。

海外の凄いところは、大事なことは結果なので、私が飲酒してようが何してようが、プロとして役目さえ果たしていれば誰も何の文句もいいません。

欧米の映画で、スターが酒とドラッグで身を崩していく話なんてごまんとありますが、こういうことですね。

日本では考えられない話です。

因みに私の演劇学校のヘッドティーチャーのアンクル・ジム(ジムおじさん)はアル中でした(^▽^;)

授業でも、アル中がどうやって酒を隠し飲むかのレクチャーが一番力が入っていたのを覚えています。

(アル中っていうと、日本じゃヤバそうなカンジがしますが、海外にはゴロゴロいるので日常語です)

そんなジムおじさんの生徒だったお陰で楽しいイギリス生活が送れました。

イギリスには伝統を重んじる厳しい学校が沢山あります。

最初はそういうところを目指していたのですが、完璧な英国英語を話すことが求められ、学校には金髪碧眼ばかりという異様な光景(向こうもこっちを異様な眼で見てました)に東洋のお猿さんの入る場所なんてモチロンありませんでした。

(英国英語をクイーンズイングリッシュなんてよく言いますが、それは女王が使う英語でミドルアッパークラスの英語がスタンダードイングリッシュとして英国英語と言われています)

行き着いたのが私が通ったStarTek。
そこでアンクル・ジムと私のイギリスでのファミリーに出会いました。

実は私は、学校創立以来初のアジア人生徒でした。

入学試験でシェィクスピアの台詞を読むのですが、ほとんど何言っているか分からなかったそうです。

でも、気合いだけが異様に凄かったんです。

親に無理やり連れてこられている甘ちゃんの中で1人だけ、死ぬ気の根性が見えたそうです。

私の異様な熱意に押されて、入学を許可したものの、先生たちもこれは果たして正解だったのか、内心ずっと心配していたそうです。

ところがアル中の役がハジけて、先生たちも良い評価を受けることになったと、ジムおじさんが話してくれました。

学校にも新しい新風が流れたそうです。

それまでは伝統的な古典演劇が多かったのですが、私が出来るものということで、スリアル(非現実的なシュールな芝居)が扱われるようになりました。

これが学校の評判をあげ、入学者がふえました。

私にもその後、バラエティに富んだ色んな役が与えられるようになりました。

卒業公演では「ゴドーを待ちながら」を演らせてもらうという光栄に預かりました。
(不条理芝居の最高峰の2人芝居です)

イギリスでは本当に貴重な素晴らしい体験をしたものです。

あの時もお酒に助けられました。

酒は意識レベルを下げるもの(しつこく言います)と言いますが、私には一概に悪いものとは思えません。

3次元の楽しさの一つにお酒があるように思います。

でもやっぱり節度が大切ですよね~(^◇^;)




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