こうして様々な神々が思いを胸に、乳海攪拌が始まりました。


まず、世界中の薬効のあるありとあらゆる種類の植物と種子が集められて海に投げ込まれました。

ボッチャ~~ンッッ! ドッボ~~ンッ!


次に巨大なマンダラ山を引っこ抜いて、山の根元を攪拌棒(いわゆるミキサーですね)として海に突っ込みました。
更に攪拌棒となった山に地下世界に住むヴァースキー龍を巻き付けて、龍の頭としっぽを神々と魔神が交互に引っ張ることで海をかき回しました。(コマの原理ですね)


筋肉マンに出てくる超人アシュラマンが何十万、何百万人といて巨大な龍の頭としっぽをひっぱって棒を回している様を想像して頂くと分かりやすいと思います。


*この光景はインド神話の中でも大変有名な光景で、様々な絵や像として残されています。
アンコールワットには巨大な壁画でこの光景が表されています。この絵のシブいTシャツも売っていました。
見た人は「ほんまや。アシュラマンや…」と言いたくなることうけあいです。
タイに新しくできたスワンナプーム空港にもこの光景が大っっ変大きな像で展示されています。


龍は両方から凄まじい力で引っ張られるので「ギャースギャース」と大変嫌がって火を噴きました。
龍の火炎で神々はひどい火傷を負ったのですが、マンダラ山の山頂から聖なる花が降ってきて神々の苦痛を取り除いてくれました。
ああ、なんたる奇跡でしょうハレルヤ…。


神々と魔神の超人的な力を持って龍を曳き始めると、マンダラ山はこの世の最後のような恐ろしい咆哮をあげながら激しく回転をはじめ、マンダラ山に住む鳥も獣も、海中の生物もすべておしつぶされ、互いにこすり合う摩擦熱で山全体が巨大な雷雲と化していきました。


インドラ神(帝釈天)はあわてて天から恵みの雨を降らせて、猛火と猛煙を消しとめましたが、その煙は毒の煙にかわりました。
猛毒をもった黒煙があがりはじめその煙はモクモクと三界を覆い尽くし始めました。


*煙を吸ったヴァースキー龍が毒を吐いたという説もありますね。


神々がブラフマー神に助けを求めると、ブラフマー神は瞑想中のシヴァ神を起こして、その毒煙を吸い込んでくれと頼みました。


「人を瞑想からたたき起こして、なんちゅう頼みごとやねん!お前が吸うたらええがな!」

…なんて、神様がそんなこと言うはずありませんね。


こんな荒業はシヴァ神にしか出来ません。

シヴァ神がどれだけ豪傑かを表す逸話なんです!


シヴァ神は見事にその猛毒の煙を呑んで、その結果のどが青くなりました。
それ以来シヴァ神は尊敬を込めてニーラカンタ(青いのど)とも呼ばれるようになりました。


さてそんな出来事が起こっている最中も神々と魔神は休むことなく、大海をかき回し続けました。

すると今度はあまりにも強い摩擦のせいで海の底に穴が開きそうになりました。

穴が開いたら霊水「アムリタ」は手に入りません。


これはまずいぞ!とみなが慌てたその瞬間、ヴィシュヌ神は巨大な亀に変身してマンダラ山の下に入り込みました。
硬い甲羅で攪拌棒の先端を受け止めたのです。
なんていう機転の利く神様でしょうか!
「そんな嘘みたいなことが出来るなら霊水なんて指先で作れるんちゃうん?!」…なんて誰も思うわけありません!
ひたすらヴィシュヌ神への感謝の念で涙を流してお礼を述べています。


*これがカメのポーズの原型です。

つまり、亀のポーズは5感を制御するポーズ。亀のポーズを取るということは不屈の精神をもって地球を支えたヴィシュヌ神の印を結んでいるにも等しいのです。

因みに毒を飲むシヴァ神のポーズってのはありません(^▽^;)


そんなこんなで1000年経ったある日。


1000年経っても神々と魔神たちは休むことなく攪拌を続けています。

するととうとう、それらが海中で溶け合い海は次第に乳白色に変わっていきました。
そして海中から光が溢れはじめ、光の中から様々なものが生まれたのですキラキラ


まずは太陽と月があらわれました。


続いてラクシュミー女神があらわれました。


その後も聖なる牛スラビ。(スラビの子供ナンディンがシヴァ神の従者で乗り物となる)


ソーマ(神酒)と、酒の女神ヴァルニー。


そして天界の樹木パーリジャータやトゥルシなどの聖なる植物


最後に天界の神々の医者ダヌヴァンタリ(医学の祖といわれる)が霊水アムリタが入った壺をかかげて現れました。


待ってましたとばかりに「そりゃぁぁぁぁ」「いただきじゃぁぁぁ」と魔神や悪鬼たちが壺に向かってラグビー選手のように次々にとびかかりますドンッ

「なにぃ騙された!!」「取られてなるものか!!」「ワンフォーオールオールフォーワンだ!」「イソップ!」と神々も後に続きます。


しかし、肉弾戦ではさすがの神様も悪鬼には勝てず、霊水アムリタはやすやすと魔神と悪鬼の手に渡ってしまいます。


神「くそ~。汚いぞアスラ!!」


魔「ぐわはは。馬鹿め。騙される方が悪いのだ!この世は悪知恵が働くヤツが勝つのよ!」


霊水アムリタを奪取された上に聞くに堪えない罵詈雑言を神々に浴びせ続ける魔神たち。


その光景を静観するヴィシュヌ神。
ヴィシュヌ神だけはそれを全て予測していました。


突然あたりに加藤茶の「ちょっとだけよ。あんたも好きね」のテーマソングが流れ出しました。

すると、喜びに浸る魔神たちの前にこの世の物とは思えない程の美女モーヒニーが現れました。
驚く魔神たちをモーヒニーは妖艶な色気で誘います。
モーヒニーは銀座のクラブのお姉さんのような手管で魔神たちを骨抜きにし、霊水アムリタをおねだりしました。
あまりの美しさに毒気を抜かれた魔神たちは霊水アムリタを言われるがまま彼女に託してしまいます。

アムリタの壺を手にしたその途端、美女は変化を解いて元の姿に戻りました。

な、なんとそれはヴィシュヌ神だったのです。
ヴィシュヌ神が美女に化けて魔神たちを誘惑していたのでした。


魔「ぬうぉぉぉ騙しやがったな!!男の尻触っちまった!」「神様がそういうことしていいのか!」
ヴ「フム。お前たちの理論だと騙された方が悪いんだったな。それはこういうことか?」


こうして霊水アムリタの効力で神々は永遠の命を得ました。

なおも闘いは続きましたが、悪鬼たちはしだいに死に絶え、人々の世に平和が戻りました。
マンダラ山は元の位置に戻され、霊水アムリタは安全な貯蔵庫に移されました。

今もって神々が命を保って世界に君臨しているんは、この乳海攪拌のおかげなのでした。


とっぴんぱらりのぷぅ。


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以上がインド神話の天地創造説です。
ヴィシュヌ派で伝わる話なので、ヴィシュヌ神の偉業が出ています。
そのうちシヴァ派の話も書きたいですね。
やっぱりヨガの神様はシヴァ様ですから。

また、この乳海攪拌にはラクシュミー女神や月と太陽のくだりもありますので
忘れる前に次はそのお話も書きます。


ではでは


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