先日、亀のポーズのお話の時にチラッと触れた乳海攪拌について。
ヒンズー教には各種神様がいて、その中でも人気があるのがヴィシュヌ神とシヴァ神。
インドではヴィシュヌ神信仰とシヴァ神信仰の人とでは伝えられている様々な話のとらえ方が変わってくるから興味深いです。
このお話は人々を救い、神々をも助けるヴィシュヌ神のお話です。
ある日、光り輝く神々の住む天界に悪鬼が侵入してきて、聖なる土地を荒らし始めました。
悪鬼たちは勝手に住み込んで、農作物を食べ散らかす始末。
神 「コラー、人の土地でなにしとんねん!出てけ!!」
鬼 「じゃかぁしい!神のくせに所有権訴えるんじゃねぇ!お前の土地って誰がきめたんじゃい!」
神 「先祖代々大事にしてきたワシの土地じゃあ!」
鬼 「そんなこと知るか!オレが住むって決めたらオレのものじゃい!」
…という争いがあったかは不明ですが、とにかく悪鬼の所業に神々はほとほと困ってしまいました。
対処に苦しんだ神々はヴィシュヌ神に相談しました。
神 「兄さぁん、何とかしてくださいよぉ。こんな問題を解決できるのガチで兄さんだけっすよ。」
…と神々がヴィシュヌ神に言ったかどうかは定かではありませんが、神々の中でもヴィシュヌ神は一目置かれる存在でした。
ヴィシュヌ兄さん…じゃなくてヴィシュヌ神はそこで皆にある提案をします。
ヴ 「諸君、悪鬼を撃退するためには、霊水アムリタを飲むしかないぞ。」
神 「霊水アムリタって不老不死の妙薬と言われる、あのアムリタですか?!」
ヴ 「うむ、説明的なセリフをありがとう。そうだあの不老不死の妙薬だ。それを飲んで不老不死にさえなれば悪鬼など簡単に撃退できるというもの。」
つまり、殺されても殺されても何度も生き返って戦い続ければ、そのうちに敵の数が減っていくはず…という意外と地味な作戦を提案したのでした。
神 「さすが兄さん!冴えてますねぇ!それじゃ早速そのアムリタを飲んじゃいましょうよ。それはどこで飲めるんですか?滋養強壮剤みたいなものならマツキヨかなんかで買えるんですかね?」
ヴ 「アムリタは作らないとないのだ。」
神 「へぇぇ。そうですか。こうみえてもアッシは調理師の免許を持ってますんでね。ほんじゃそいつをちゃっちゃと作りましょうか」
ヴ 「それがそんなに簡単ではないのだ。霊水アムリタを作る為には海を乳白色になるまでかき混ぜて攪拌する必要があるのだ。」
神 「海を攪拌ってそりゃウチのフードプロセッサーじゃ無理ですね。一体どうやってそんなことが出来るんですかい?」
ヴ 「それを行うためには天界の全ての神の力をあわせても足りないので、魔神(アスラ)達の力も借りる必要がある。」
神 「ちょちょっと待ってくださいよ。天界の神々全てはまだしも魔神って…そんなムチャクチャな。魔神が力を貸してくれるんなら、最初から争いなんてしてませんて。」
ところが、有名な霊水アムリタを神々が作るという噂を聞きつけた魔神がなんと協力を申し出てきたのです。
ある日魔神(アスラ)がヴィシュヌの元を訪れこう言いました。
魔 「え~、まいどどうも!いつもご贔屓にしてもらってありがとうございやす。でへへ。ところでちょいと小耳にはさんだんですがねぇ、なんでも霊水アムリタを作るそうじゃないですかぃ。言ってくれないなんて水臭いなぁ。このこの。うちの組も霊水アムリタを作るのに人肌脱ぎましょう。その間は、一時休戦ってことでどうですかい?」
こうしてお互いの利害関係が一致して、不老不死の妙薬を作る為に、天界と悪鬼たちは休戦したのでした。
休戦するんならいっそのこと不老不死の薬作らなくていいんじゃないって思われる方もいらっしゃるかもしれません。が、同じ目的の為に一致団結はしているものの、心の底から信頼し合っているわけではありません。
事実、魔神たちは不老不死の薬を分け合う気などなく、上手く神々を利用して薬を作らせて巻き上げようと画策していました。
何も知らない神々は「みんなで協力するって楽しいね。」「あんな意地悪なこと言ってたけど、魔神君たちも本当は仲良くしたかったんだね。」とすっかり信じ込んでしまいました。
ヴィシュヌ神にだけは何も言わないものの、魔神の思惑が全てわかっていました。
それぞれの思惑を胸に乳海攪拌が始まるのです。
つづく・・・
全然亀のポーズと関係ありませんね
これからです