伝統 華佗 五禽戯54式

 

虎戯:

 

虎は骨を練る。
髄という物質から骨が生まれる。
継続して虎戯を行うことで 全身をよく動かすべき骨と腱 肌肉の強度を高め 関節をも強くする。
精の力を増し その雰囲気は山中の猛獣である虎の勢いを体現できる。
陰陽学説では、金を拵える、卦を見てみると「兌」に属し、これを取るには「坎水」がいる。
腎水が活性化されれば 腎を固くする。腎気が固まると、これはすなわち精となり、精をよく集めれば気が充ちる。
気が充ちてこそ、真の陽になり よく収めれば五臓六腑が皆固く丈夫になる。
よく虎戯を練習することで、剛柔のバランスがとれ 血気は全身を廻り督脈が通じていく。
督脈が通じれば、脈という脈は皆通じるのである。
精の力は「肺」に充ちる。肺は金に属し、腎水の精と気をむすぶ。
即ち金は水を生む。
五行理論の中で 天は水を生み 腎はその象をつくり 腎が足りなければ 肝陽が弱まる。
そんな時は心を清めるはたらきが大事である、心が清まれば脾が健やかになる。
脾が健やかになれば、肺に潤いが得られ 肺が潤えば 腎水が満ち足りる。
五行相生が大事で、陰陽の流れを妨げれば 陰と陽の調子は失われなければ 疾病の可能性に侵されることはない。
これに逆らえば水は足らなくなり、水が足りなければ 木が枯れる 木が枯れれば 火が燃え上がり 気は金燥になる。
金燥になると水は涸れ、陰陽失調になる。
五行は乱れ 内に邪が侵し 賊になる。
故に天は一生の水を生む。これを心得なければならない。
腎は先天の本である。
腎が健やかならば、頭部(脳)や眼は健やかで
防身の力を得て 一切の肝の力を弱めることはなく、糖尿病のような下半身の臓器を傷める病気にはならない。
骨の質を増強していくことが求められる。そうすることで関節炎を防ぎ、腎虚を防ぐようにする。


虎の技を練る時は「猛々しさ」と「虎視眈々」とした眼力をも重視します。

五行では水に属し 腎臓の働きに関係して作用します。

「骨」につながる組織を鍛錬することで骨髄の流れを活性化できます。

関連する 季節は冬

下半身の臓器や排泄器官や生殖器官は冷えに弱く 方法として これらに関係する臓器の活性化を施していくのが目的です。

 

 

鹿戯:

 

鹿は筋を練る。
鹿は木に属している。
鹿は体をよくぶつけ合って戯れる。よく奔走し 時に立ち止まっては遠くを望む。
行動は軽快でよく走る。左右を見回しては、足元もよく見る。
鹿の練習で必ず意識するべきは、筋膜に気を通す動きをする。
気は人の中にもあり、五臓六腑を周行する。百骸九孔、竅の間にもあって導き引き入れる。
小さな疾病の要素を取り払い、それを延年させることが大切である。
長く鹿戯を練習すれば、いつも筋と脈を引き伸ばせる。
肝火を安定させれば、体力は強く壮んになる。益々腎と腰を固め 経絡を通し 気血を調和させる。
腰椎のゆがみを治し、肝炎などの血液循環の悪さから起こる疾病の要素を抑える。
病への不安を和らげるに、人の経絡というものは一旦でも通りが悪くなり、気血が凝固停滞したりすることから
脈の病は出やすい。
鹿戯を練ることで、意識を以って領気となし、丹田に気を蓄える。
動作に気を導くには発散の感覚がよい。
行う時の内面では呼吸を配合し、気が行くには血が走り、正しく血液循環がはたらくのである。
 
正しく 華佗の言う通り 血脈を通せば病は生じない。肝を緩めることは血液の流通がよくなるのである。
 
鹿の技は「筋」に意識をおいた鍛錬を大事にします。

五行では 木に属し 肝臓に関係します。

関連する季節は春

鹿は敏捷性がよくすばしこい動きのできる筋肉をもつ生き物であり、鹿の動きを模倣した動作は尾閭がよく作用します。

 

 

熊戯:


熊は肌肉を練る。
脾は肌肉を主どり 脾胃のはたらきとその効能を改善する。
食物の栄養を臓腑にみなぎらせ、肌の力を増強する。
脾胃の能力を促し、肝気の理を整え
益々気の流れを高め、消化器系の動きを促進させ、脾虚にならないようにする。
便秘・胃下垂・胃酸過多・十二指(支)腸潰瘍・脱肛腎炎を抑える。


熊の技は肌肉を強め 脾胃を丈夫にします。

五行では 土に属し 脾臓に関係します。

関連する季節は土用(季節ごとの分かれ目)

穏やかでも力強い能力を持つ熊の動きの真似をする技を鍛錬すると、

疲れやすい体が落ち着いて正常に戻り 内在する気力が増大させられます。

 

 

猿戯:

 

猿は心を練る。
猿は霊活性が高く、巧みである。
その性質は陰土に属している。
猿の心を察するには、険しく高い山の木々の中に中にいても自由自在に飛び跳ねては動き回る。
その動きの変化は予測不可能で巧みである。
「偸桃献果:桃の果実を偸んで献上する」動作は奇をてらう。
どんな高いところでも木をよじ登り、動きを怖れることはないのである。
外練としては肢体(四肢)を伸び伸びと使い自由自在で敏捷性に優れ、
内練としてはどんな状況でも機知に富んだ心の持ち主である。
心と精神は血脈を主さどり、その動きを形に表す。
これが猿戯は心を練る、というゆえんである。
 
脳筋は霊活性を失わず 記憶力を高め強める。
心と胸を開き伸び伸びとした心持ちで動き、四肢を機敏にし 血脈は通じやすくなり、
認知症を防ぎ、脳血管の停滞などからくる疾病を防ぐ。脳血栓、貧血など。


猿の技は 猿の特徴である機智的に素早く動ける反射を司る 脳筋の反応力を鍛えます。

五行では 火に属し 関連する臓器は心臓であり、脳(心)と連動します。

関連する季節は夏

練功によって習練された脳(心)は不愉快な心地を鎮め 楽しくなる情緒を高められます。

 

 

鳥戯:

 

鳥練皮毛 気貫周身 鳥・鶴は丈夫な皮と毛を身に着けている。
人もそのような毛穴を含む皮膚呼吸・皮膚表面の強度を上げ 気はその体内を貫くように周らせる。
 
鶴は長寿の化身の鳥である。おめでたい松鶴延年の意を表す。
鳥の技は皮毛(毛穴・皮膚呼吸)を鍛えます。

五行説の金に属し 関係する臓器は肺です。

関連する季節は秋

鳥の中で一番長寿なのは鶴であります。翼を広げ 空中を旋回する様子を 動きに多く取り入れたのが鳥戯です。

鳥戯を修練すれば、肺の機能が改善され 全身においてでは、発汗能力を高め 熱を下げることができ

また胸(胸郭)を広げ 呼気と吸気の流れを整えることが出来るのです。

鶴は 鍛錬されたような皮膚の如く羽毛を持ち、手足は軽くすばしこく 高く飛び上がる能力に優れています。

鳴き競うことを好み 高いところにおいてでも平衡感覚に秀でていて、

心地よい「和み」の身体感覚を 本能的に理解できている動物です。