~五禽戯の歴史~
五禽戯 ごきんぎ は1800年間の長い歴史を持つ、中国発祥の体力増強法で虎・鹿・熊・猿・鳥の動作から編み出された動気功です。
※よく日本で紹介されている文章のものでは「体操」と書かれているものがありますが、動作においても意識呼吸法においても内容は深く単純な表記で体操というようなものでは全くありません)
由緒ある、歴史史実に出てくる歴史書、
「正史三国志」
作者は「陳寿 233~297」
の中の魏書に記されている「方技伝 第二十九 華侘伝」です。
(※同じ魏書の中にある東夷伝の倭人の項を私達は歴史で「魏志倭人伝」といっていますが、その「魏志」とは魏書のことです)
華侘(かだ)、字は元化、沛国 譙県(現在の安徽省亳州市)の人である~中略~
養性の術に通暁しており、当時の人々は彼の年がもう百歳にもなるはずだとしたが、見たところは若々しかった~略~
華侘は語った。
「人の身体というものは働かせることが必要だ。ただ極度に疲労をさせてはならない」
「身体を動かせば穀物の気が消化され、血脈はスムーズに流れて、病気も生じようがない」
「ちょうど 戸の枢:くるる が(いつも回転しているので)朽ちることがないようなものだ」
(※ これは良く開く扉の軸である枢は虫が食わない、流れる水は腐らない とあり、ドアの軸は回転する場所で
それを身体全身の背骨や関節に例え、水は血流やリンパの流れに例えています)
さればこそ古の仙人たちは導引と呼ばれることを行い、熊のように木にぶらさがり、鴟(トビ)のように首をめぐらせ、
腰や身体を伸ばし、それぞれの関節を動かして、身体の老化を防ごうとしたのだ。
私にも一つ長生法があり、それを五禽之戯(五つの動物の運動)と名づけている。
第一が虎、第二が鹿、第三が熊、第四が猿、第五が鳥である。
(五種類の運動は、五臓の動きを意識して、特徴それぞれに動物を模倣しては爪で掴み、全身に伸びをしたりしながらも動き躍ねまわることができるのだ)
虎戯
鹿戯
熊戯
猿戯
鳥戯
この運動(五禽戯)によって病気が予防できるだけでなく、足腰も鍛えることができて、導引の用に当てることができる。
身体に調子の悪い所がある時には、起き上がってどれでもよい、一つの動物の戯を行えば、びっしょりと汗をかき
身体は軽々とし、腹も減って食欲がわく。
学んだ弟子の呉晋はこの術を実行し、
年は九十あまりにもなったが、目や耳はすこしも遠くはなく、歯は一本も抜けることがなかった。とあります。
参考文献 「正史 三国志4」 筑摩書房発刊より~
(※今でも第58代周金鐘老師「タイムレコーダー 3:54~」にまで続く、その伝承は実際に本当だったことを亳州の現地で確信しました)
こうして正しく歴史的に見れば、
古来 紀元前 前漢の時代に存在していた 所謂「気功運動」は 馬王堆導引図に描かれた 導引術 が全ての源流・ルーツです。
かつては「吐納」「導引」と呼ばれ、それから後漢末の2世紀頃に導引を基にして 華侘 が五禽戯を創始しました。
ですから 五禽戯は、その後に多く生まれた中国健身術、武術運動での「套路運動」「象形套路」の元祖です。
そして本来は導引であった「気功」は「静気功」と「動気功」とに分類されるようになり、「静気功」は医療面に発展し、「動気功」は武術運動になっていきました。
その他、有名な気功でも、嵩山少林寺に伝わって 少林武術の基になった 易筋経は8世紀 八段錦は10世紀頃の成立で、
日本でも広まった 太極拳運動でも一番古い成立のものでも明代であり、五禽戯成立の立場からは太極拳も導引、五禽戯から派生した動気功に武芸動作を取り込んだものであり、
少林武術と同様に五禽戯から派生したスタイルです。
私達が第57代、58代の老師の皆様から直接学び受け継承した、
安徽省亳州市に伝わる1800年の歴史ある伝統華侘五禽戯は、より素朴でシンプルな効能や医学理論、運動体系として完全に確立していて素晴らしいものです。