米国新大統領になった「ドナルド・トランプ」さんが就任して来週で、
1か月が経とうとしています。
私の個人的所感で思うのは、老若男女全世代で「考え方のジェネレーションギャップ」が非常に大きくなっていて、
今後の私が今まで通りに「政治経済」の将来を予測し、事実の連続から、
どんなかたちで政府与党、政権が何をしようとも、
「自分達が確実にいい方向」へ、舵をきって、明るい未来を目指し実践していきます。
私の2014年12月4日の記述
「追及すべき相手を間違えてはならない」
2014年11月14日の記述
「アジアの経済成長率ランキングはヤバいことになっている」
2014年11月日の記述
「2013年 世界経済成長ランキングを見ると、すべてが判りやすい」
しかしながら、テレビ番組や新聞などの大企業会社が制作するニュース番組や出版物を見ると、相変わらずに「外交成功!」みたいな報道をしていますが、
私のこれまでに認識と、ここ最近の数日間で、気になる記事を3つ紹介します。
※一番すごい、と思ったのは最期の「3つめの記事」
「安倍晋三首相はそんなトランプ大統領の「狂気な演技」に、外国首脳の中で、いの一番に騙されてしまったかもしれない。安倍首相はトランプ氏の大統領選挙当選後には、極めて異例となる大統領就任前の直接会談をニューヨークで急ぎ足に敢行。
さらに、今回の日米首脳会談前には、米国で4500億ドル(約51兆円)規模の市場と70万人の雇用創出を目指す超巨大プロジェクトを矢継ぎ早にとりまとめた。
51兆円と言えば、日本のGDPのほぼ10分の1、日本の防衛費の約10倍にあたる相当な額である」
51兆円と言えば、日本のGDPのほぼ10分の1、日本の防衛費の約10倍にあたる相当な額である」
〇経済不況にあえぐ日本国民の稼いだ「51兆円、日本のGDPのほぼ10分の1」のお金を、簡単にアメリカのためにあげちゃう太っ腹、中国とは国境海域の領海線を外交で話し合いをすれば、尖閣への軍事防備なんて不要になるはず。
すごい・・ 日本政府。それを選んだ日本国民・・・ 大丈夫ですか。皆様!?
(ちなみに私は、現政権もまったく支持も信頼もしていません)
莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] 2017年2月2日
約2年前のいま頃、中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、日本では熾烈な議論が繰り広げられていた。「日本はそれに加入すべきではない」といった感情的な論調が主流だった。中には中国を罵倒する発言もあちらこちら出ていた。
当時、私は出演したテレビ番組や執筆している連載コラムなどで、「AIIBに加入する国がもっと増えてくると思う。中国主導かどうかといった問題よりも、国際銀行の設立に関わった経験を持つ先輩役の日本もアジアインフラ投資銀行に参加すべきだ」と力説した。しかし、一蹴される、または一笑されるケースが多かった。日本メディアの一辺倒的な報道姿勢にも目を覆いたくなる場面が多々あった。
1998年から「日中関係はこれから20年間、よくならない」と予測し、2005年には、「日中友好時代が終わった」との判断を下した人間としては、こうした論調やメディアの姿勢には別に驚きなんかは覚えていない。
ただ、生活基盤を日本に置いている以上、日本は自らの国益を損なうまでの誤った政治判断をしたら、まずいのではと心配していた。
「冷静に」と言ったら売国奴と罵倒された筆者
このような思いに駆られて、2015年4月2日、ダイヤモンド・オンラインのこのコラムで、「日本は中国に対する冷静さを欠き、AIIB加入問題で流れを読み間違えた」と題した文章を発表した。
文章の中で、私は、中国が主導するAIIBの創立メンバーの募集について、米国に追随し、中国の孤立を予測し期待していた日本は「超甘すぎる観測で世界の流れを読み違え」、「逆に孤立した立場に追い込まれた」と指摘した。
当時、日本の経済界からも「インフラビジネスが不利になること」を心配する声が上がった。そこで私は「激動する日中関係と世界関係を平心静気に見つめて」いこうと提案した。この「平心静気」は中国のことわざだが、「落ち着いて冷静に」という意味だ。
しかし、こうした発言は一部の日本人にとっては受け入れ難いもののようだ。ネットには、「日本を間違った方向に誘導する売国奴」「売国ゴミ屑」として、私のような主張や提案をする人間を罵倒するためのリストが出ていた。
そこには、二階俊博(自民党)、福田康夫(旧首相)、河野洋平(旧自民党)、石原伸晃(自民党)、辻本清美(民主党)、藤井裕久(旧財務省)、岡田克也(民主党代表)、蓮舫(民主党)、江田憲次(維新の党)、小沢鋭仁(維新の党)、天木直人(外交評論家)、古賀茂明(旧通産官僚)、田中均(旧外務審議官)、志位和夫(共産党委員長)、孫崎享(外交官、評論家)、姫田小夏(中国情勢ジャーナリスト)、瀬口清之(キヤノングローバル戦略研究所主幹)といった方々の名前が出ている。どうしたわけか、中国人の私の名前も載せられている。そのリストのいい加減さもそれで露呈している。
ところで、時間が推移しているうちに、AIIB関連の情勢はますます「売国ゴミ屑」と罵られる私たちの方向に傾斜してくる。
昨年9月1日、「カナダ、中国主導のAIIBに9月中にも加盟申請へ」という北京発ロイター電に、一部の日本人が心の穏やかさを失ったはずだ。
当時、トルドー・カナダ首相に同行して中国を訪問しているモルノー同財務相はAIIBが非常に有効な国際機関になる兆しが見られると指摘し、昨年9月中の加盟申請を目指す方針を示した。
米国のホワイトハウスのアーネスト報道官も、米国とカナダの当局者はAIIB加盟について連絡を取り合っていると記者団に説明した。
AIIBの金立群総裁は記者団に「カナダの参加決定はAIIBの運営を大幅に強化する」と述べたうえ、「米国のAIIBに対する態度に変化の兆しが見られる。また世界銀行のAIIBとの協調拡大は心強い」と語った。
17年1月下旬、中国の環球時報などのメディアが相次いで「中国主導のAIIBにカナダ、アイルランド、スーダン、エチオピアなど25ヵ国が新加入へ、米国加入の可能性も」といった内容のニュースを配信した。
トランプ新政権もAIIBへの姿勢に変化
同1月24日付英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに、金総裁は、今年は新たな参加予定国には含まれていないが、トランプ大統領率いる米国が加盟する可能性もある。昨秋、トランプ米大統領の政権移行チームがオバマ大統領(当時)のAIIB不参加の決定を批判していた、と語り、新政権で米国に変化が生じる可能性もあると指摘していた。
実際、愚直に米国に追随して行動する日本も、こうした米国の変身ぶりに度肝を抜かれている。
トランプ大統領の上級顧問(安全保障問題担当)を務めるジェームズ・ウールジー氏がAIIBに参加すべきだと主張し、(AIIBに)米国が参加しなかったことについて「戦略的な誤り」との認識を示した。ジェームズ・ウールジー氏が元中央情報局長官だったという事実もこの発言の重みを増している。このニュースによる大きな衝撃が日本に駆け抜けたと嘆くような記事が出ている。
ただ、米国が即AIIB加盟へという方向へは、事はそう簡単に運ばないと思う。最近、トランプ大統領の側近であるスティーブン・ムニューチン氏が昨年11月16日、「インフラ投資の資金調達でインフラ銀の設立を検討する」と明言している。「アメリカ・インフラ投資銀行(American Infrastruture Investment Bank)」の設立を考えているのだろう。その銀行も略せばAIIBとなる。中国主導のAIIBと同じ表現になり、ちょっと紛らわしいが、米国版AIIBの誕生の可能性も絶対ないとは言えない。
だから、改めて日本に提案する。AIIBに加盟するかどうかという具体的な案件への各々の対応策という次元の問題よりも、日本は「落ち着いて冷静に」日中関係を見つめる姿勢を保っていくことが重要だ。そうすれば、日中関係を推進するのに大事なシグナルを見落とさずに、進むべき方向も間違えずに済む。
〇米国では酷評「マティス・稲田会談は成果なし」
日米同盟強化の具体的ビジョンを期待するトランプ政権 2017.2.9(木)
アメリカの新国防長官ジェームズ・マティス氏が来日し、安倍晋三首相や稲田朋美防衛大臣と会談を行った。日本のメディアはマティス氏が「尖閣は日米安全保障条約の適用範囲内」と語ったことに胸をなで下ろして、おきまりの楽観的報道を垂れ流している。
しかし、アメリカ側の東アジア戦略関係者などの間では、「マティス・稲田会談はさしたる成果がなかった」と失望の声が上がっている。
具体的ビジョンがゼロの日本
日本側は口を開けば「日米同盟の強化」とのお題目を唱えるが、「どのようにして強化するのか」に関しての具体的な決意や提言がなされることはない。
今回、なぜマティス長官は国防長官就任後初の海外訪問先の1つに、NATO同盟諸国ではなく日本を選んだのか。米国では、もしも今回の訪問を軍事作戦と位置づけるならば、「同盟国を安心させる作戦(Operation Allied Reassuarance)」とでも名付けられるだろうと言われている。つまりマティス長官の日本訪問は、トランプ政権にとっての「同盟強化」の決意の表明であった。
具体的ビジョンがゼロの日本
日本側は口を開けば「日米同盟の強化」とのお題目を唱えるが、「どのようにして強化するのか」に関しての具体的な決意や提言がなされることはない。
今回、なぜマティス長官は国防長官就任後初の海外訪問先の1つに、NATO同盟諸国ではなく日本を選んだのか。米国では、もしも今回の訪問を軍事作戦と位置づけるならば、「同盟国を安心させる作戦(Operation Allied Reassuarance)」とでも名付けられるだろうと言われている。つまりマティス長官の日本訪問は、トランプ政権にとっての「同盟強化」の決意の表明であった。
それゆえアメリカ側戦略家たちの多くは、ほんのわずかでも良いから「日米同盟強化」についてのなんらかの具体的なビジョンが稲田大臣の口から出てくることを期待していた。しかし、“恒例”の通り、日本側からは何ら具体的な話は出ることがなかった。そのため、失望の声が上がっているのだ。
日本は国防能力強化の決意を示すべきだった
アメリカでも単純な人々は、「沖縄の海兵隊駐留費に関して、もちろん全額とまではいかなくても、なにがしかの増額を示唆するのではないか」という期待を持っていたようだ。だが、それらの人々は実情に疎い連中であり、日本側としてもそのような期待を無視すべきなのは当然である。
ただし本コラムでも触れてきたように、日米同盟を「さらに強化する」には、日本自身も国防能力を強化することが求められる。そのためには国防費の増額が不可欠である。国際水準から見て異常に低い国防費GDP比(1.0%)を、国際水準(2.3%)近くまで押し上げる必要があるのは、軍事的常識と言えよう。
そこで、日本側としては「日米同盟強化のために日本自身の国防能力を強化し、そのために国防費を倍増する努力を開始する」といった趣旨の決意表明をすべきであった。
日本を取り囲む軍事的状況がいかに厳しいものであるかは、論を待たない。それにもかかわらず、日本政府が国防費の本格的増額に向けての努力すら行おうとせずに、ただただ「日米同盟強化」を強調するということは、トランプ政権側には日本がさらにアメリカに頼ろうとしているとしか写らないことになる。その結果、「アメリカにベッタリ頼って日本の国防を強化しようというのなら、金を出せ」といったトランプ的論理が飛び出してきかねない。
それだけではなく、アメリカをはじめ「まともな国防意識を持った国家」ならば、自国を防衛する意思を持ち合わせていないような国と同盟を結んでも、有事の際にははなはだ心許ない、と考えるのは当然である。これでは「同盟関係の強化」どころか「実質的弱体化」につながりかねない。
より具体的なアイデアの一例
同盟関係の見直しと強化を押し進めると公言しているトランプ政権が誕生した今こそ、日本も自主防衛力を強化することによって日米同盟を強化するという思考回路に切り替える必要があるし、そのチャンスとも言える。
もっとも、「国防費を倍増する努力を開始する」そして「国防能力を強化する」と表明しても、来年度予算からいきなり国防費がGDP比2%になることはもちろん、GDP比1.2%になることすら不可能に近い。日本政府によるこのような表明は、あくまでも“国防の決意”であり“努力目標”であることは、トランプ政権にとっても自明の理だ。
そこで、より具体的な短期的目標を掲げることもまた必要であろう。たとえば、日本自身の海洋戦力を強化することで、アメリカ海軍の極東方面海洋戦力ならびにオーストラリアをはじめとする他の同盟諸国との海洋戦力を集結させて、急速に強化が進む中国の海洋戦力に対抗する方針を示すのだ。
トランプ政権は、オバマ政権下で大きく落ち込んだアメリカ海洋戦力を再建するために「350隻海軍建設」を選挙期間中に公約として打ち出した。これは、現在250隻レベルにまで低下してしまったアメリカ海軍主力戦闘艦艇(空母、原潜、巡洋艦、駆逐艦など)の数量を350隻レベルまで引き上げると共に、既存の艦艇にも近代化改修を行い、強力な艦隊を復活させるというものである。このような大規模な軍艦建造計画には、やはり選挙公約として打ち出した「フィラデルフィア海軍工廠の復活」や「アメリカの鉄で、アメリカの労働者により、軍艦を建造する」という経済政策も連動しているため、トランプ政権は公約通り推進するものとみられている。
しかしながら、海軍関係戦略家の間からは「『350隻海軍』では、中国に対抗するには厳しい」という声も上がっている。
というのは、アメリカ海軍の軍艦建造能力の4倍の規模を誇る中国海軍は、猛烈なスピードで新型戦闘艦(原潜、駆逐艦、フリゲート、コルベットなど)を生み出しており、2017年に入ってからだけでも3隻の軍艦が誕生している。このペースで行けば、遠からず「500隻海軍」がアメリカ海軍の前に立ちはだかることになる。
さらにアメリカ側にとって都合が悪いことに、アメリカ海軍は太平洋側と大西洋側に戦力を2分しなければならないという地理的制約がある。そのため、いくらトランプ政権が大海軍再建計画を開始しても、中国海軍を押さえ込むには相当の苦戦が予想されるというわけだ。
そこで、日本も日本自身の防衛に不可欠な「より大規模な海洋戦力」を構築することにより、対中国戦略で苦闘が強いられるアメリカ海軍の極東戦力にとって、名実ともに心強い同盟軍としての役割を分担することが可能になる。
もちろんそのためには大規模な国防費増額が必要になることは論を待たない。このように目に見える形での日米同盟の具体的強化に関するビジョンを、日本側から提示することが何にもまして必要である。
日本は国防能力強化の決意を示すべきだった
アメリカでも単純な人々は、「沖縄の海兵隊駐留費に関して、もちろん全額とまではいかなくても、なにがしかの増額を示唆するのではないか」という期待を持っていたようだ。だが、それらの人々は実情に疎い連中であり、日本側としてもそのような期待を無視すべきなのは当然である。
ただし本コラムでも触れてきたように、日米同盟を「さらに強化する」には、日本自身も国防能力を強化することが求められる。そのためには国防費の増額が不可欠である。国際水準から見て異常に低い国防費GDP比(1.0%)を、国際水準(2.3%)近くまで押し上げる必要があるのは、軍事的常識と言えよう。
そこで、日本側としては「日米同盟強化のために日本自身の国防能力を強化し、そのために国防費を倍増する努力を開始する」といった趣旨の決意表明をすべきであった。
日本を取り囲む軍事的状況がいかに厳しいものであるかは、論を待たない。それにもかかわらず、日本政府が国防費の本格的増額に向けての努力すら行おうとせずに、ただただ「日米同盟強化」を強調するということは、トランプ政権側には日本がさらにアメリカに頼ろうとしているとしか写らないことになる。その結果、「アメリカにベッタリ頼って日本の国防を強化しようというのなら、金を出せ」といったトランプ的論理が飛び出してきかねない。
それだけではなく、アメリカをはじめ「まともな国防意識を持った国家」ならば、自国を防衛する意思を持ち合わせていないような国と同盟を結んでも、有事の際にははなはだ心許ない、と考えるのは当然である。これでは「同盟関係の強化」どころか「実質的弱体化」につながりかねない。
より具体的なアイデアの一例
同盟関係の見直しと強化を押し進めると公言しているトランプ政権が誕生した今こそ、日本も自主防衛力を強化することによって日米同盟を強化するという思考回路に切り替える必要があるし、そのチャンスとも言える。
もっとも、「国防費を倍増する努力を開始する」そして「国防能力を強化する」と表明しても、来年度予算からいきなり国防費がGDP比2%になることはもちろん、GDP比1.2%になることすら不可能に近い。日本政府によるこのような表明は、あくまでも“国防の決意”であり“努力目標”であることは、トランプ政権にとっても自明の理だ。
そこで、より具体的な短期的目標を掲げることもまた必要であろう。たとえば、日本自身の海洋戦力を強化することで、アメリカ海軍の極東方面海洋戦力ならびにオーストラリアをはじめとする他の同盟諸国との海洋戦力を集結させて、急速に強化が進む中国の海洋戦力に対抗する方針を示すのだ。
トランプ政権は、オバマ政権下で大きく落ち込んだアメリカ海洋戦力を再建するために「350隻海軍建設」を選挙期間中に公約として打ち出した。これは、現在250隻レベルにまで低下してしまったアメリカ海軍主力戦闘艦艇(空母、原潜、巡洋艦、駆逐艦など)の数量を350隻レベルまで引き上げると共に、既存の艦艇にも近代化改修を行い、強力な艦隊を復活させるというものである。このような大規模な軍艦建造計画には、やはり選挙公約として打ち出した「フィラデルフィア海軍工廠の復活」や「アメリカの鉄で、アメリカの労働者により、軍艦を建造する」という経済政策も連動しているため、トランプ政権は公約通り推進するものとみられている。
しかしながら、海軍関係戦略家の間からは「『350隻海軍』では、中国に対抗するには厳しい」という声も上がっている。
というのは、アメリカ海軍の軍艦建造能力の4倍の規模を誇る中国海軍は、猛烈なスピードで新型戦闘艦(原潜、駆逐艦、フリゲート、コルベットなど)を生み出しており、2017年に入ってからだけでも3隻の軍艦が誕生している。このペースで行けば、遠からず「500隻海軍」がアメリカ海軍の前に立ちはだかることになる。
さらにアメリカ側にとって都合が悪いことに、アメリカ海軍は太平洋側と大西洋側に戦力を2分しなければならないという地理的制約がある。そのため、いくらトランプ政権が大海軍再建計画を開始しても、中国海軍を押さえ込むには相当の苦戦が予想されるというわけだ。
そこで、日本も日本自身の防衛に不可欠な「より大規模な海洋戦力」を構築することにより、対中国戦略で苦闘が強いられるアメリカ海軍の極東戦力にとって、名実ともに心強い同盟軍としての役割を分担することが可能になる。
もちろんそのためには大規模な国防費増額が必要になることは論を待たない。このように目に見える形での日米同盟の具体的強化に関するビジョンを、日本側から提示することが何にもまして必要である。
〇日米首脳会談で安倍首相は「罠」にハマった 2017/2/13 14:39)
「マッドマン・セオリー」に騙される日本
ドナルド・トランプ米大統領は型破りで突飛なことをする。予測不可能で衝動的なので、日本をはじめ、世界は注意しなくてはいけない――。もし、あなたがこう信じているならば、すでにトランプ大統領に騙されているかもしれない。
「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領は、これまでに通商問題や為替政策、在日米軍の駐留経費問題でさんざんと日本を批判してきた。しかし、2月10日の日米首脳会談後の記者会見では「われわれは自由で公平、両国にとって利益をもたらす貿易関係を目指す」「日本は重要な同盟国であり、日米同盟は平和と繁栄の礎だ」と日本を持ち上げた。
●ニクソン元大統領の「マッドマン・セオリー」を実践
「狂気」を装いながら、結果的に極めて合理的に振舞っている。駆け引きの一環として、常軌を逸した過激な言動を意図的に繰り返し、交渉相手国に要求や条件を呑ませることに成功している。日本のメディアではあまり報じられていないが、これは、トランプ大統領が尊敬するニクソン元大統領の「マッドマン・セオリー」(狂人理論)を実践しているにすぎない。
安倍晋三首相はそんなトランプ大統領の「狂気な演技」に、外国首脳の中で、いの一番に騙されてしまったかもしれない。安倍首相はトランプ氏の大統領選挙当選後には、極めて異例となる大統領就任前の直接会談をニューヨークで急ぎ足に敢行。さらに、今回の日米首脳会談前には、米国で4500億ドル(約51兆円)規模の市場と70万人の雇用創出を目指す超巨大プロジェクトを矢継ぎ早にとりまとめた。
51兆円と言えば、日本のGDPのほぼ10分の1、日本の防衛費の約10倍にあたる相当な額だ。この投資の原資の一部としては、私たち日本人の老後の蓄えとなる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の積立金をあてる案も検討されている。米国ではなく、需要不足で低成長にあえぐ日本の地でこそ必要な施策ではないかと思えるほどだ。
トランプ大統領は選挙中から、自動車をやり玉に対日貿易赤字を問題視し、日本が輸出を増やすために為替操作で円安に誘導していると批判してきた。日本など同盟国の駐留経費負担が「不公平だ」と主張してきた。安倍首相は、そんな強硬な新大統領を何とかなだめるために、米国にすり寄る形で手持ちのカードを最初から大きく切ってしまった。一方、「マッドマン」を演じるトランプ氏は、一見すると突飛で非合理な行動でも、実に合理的な経済利得を得た。
安倍首相のほか、トヨタ自動車も、大統領就任前のトランプ氏からメキシコでつくる新工場についてツイッターで非難されたことから、豊田章男社長自ら米国に5年間で100億ドル(1.1兆円)を投資する計画を発表した(この投資計画自体は以前から策定されていたものであり、トランプ発言とは関係ないようだが)。
安倍首相も豊田社長も、トランプ氏の雇用創出の要求にすかさず応じる姿勢をみせることで、関係を良好に維持したいとの思いがあったのだろう。
●おじけづいて次々と三振
しかし、野球で例えれば、米国人投手が最初に思いっきり日本人打者にビンボールを投げ、ひるませる。そして、「次もどんなビンボールが来るかもわからない」とおじけづいた日本人打者が次々と三振をしてしまったようなものだ。そして、官民そろって次々と米国に得点を献上している。
「思いやり予算」と呼ばれる在日米軍駐留経費負担も日本の財政難を受け、1999年度の2756億円をピークに減少傾向に転じ、現在は約1900億円で推移している。トランプ大統領の負担増を求める先制攻撃があり、日本側としてはこれ以上、減額することが事実上難しくなってしまった。
さて、トランプ大統領の行動にみられる「マッドマン・セオリー」とはいかなるものか。もともとはウォーターゲート事件で失脚したニクソン元米大統領が、外交交渉で重宝していた戦略だ。国家安全保障政策やビジネスなど様々な場で用いられるゲーム理論の1つとして知られる。
ニクソン元大統領の首席補佐官だったハリー・ハルデマン氏はウォーターゲート事件後に出版した回顧録”The Ends of Power”の中で、ニクソン氏が「マッドマン・セオリー」について次のように語ったことを打ち明けている。
「北ベトナムに、私が戦争を終わらせるためなら、どんなことでもやりかねない男だと信じ込ませて欲しい。我々は彼らにほんの一言、口を滑らせればいい。『あなたもニクソンが反共に取りつかれていることは知っているだろう。彼は怒ると手に負えない。彼なら核ボタンを押しかねない』とね。そうすれば、2日後にはホーチミン自身がパリに来て和平を求めるだろう」
このニクソン氏の策略通り、米国はパリ和平会議で北ベトナムに米国側の条件を承諾させることに成功した。ニクソンがクレイジーだから核ボタンを押しかねないと北ベトナムの指導者に思い込ませることによって、米国は効果的に外交的成果を得たのだ。
2016年12月20日付のワシントンポスト紙の記事によると、トランプ大統領はこのニクソン元大統領の「マッドマン・セオリー」を信奉している。トランプ氏は、予測不能で、長年にわたる国際規範に敬意を払わないという自らの評判を利用し、米国の敵対国をおじけづかせて譲歩するよううまく追い込んでいる。
なぜトランプ氏はニクソン氏を尊敬するようになったのか。
実は、実業家時代のトランプ氏は、ニクソン氏から手紙をもらったことがある。1987年12月のことだ。この手紙の中で、ニクソン氏は、元ファーストレディーの妻が、テレビ出演をしていたトランプ氏を「素晴らしい」と語ったと伝え、「トランプ氏が選挙に立候補すれば勝つ」と称賛した。トランプ氏はこの手紙を大切に保管し、現在はホワイトハウスの執務室に飾っている。
また、トランプ氏は、そのニクソン政権で、国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官を歴任したキッシンジャー氏とも選挙中からたびたび会談してきた。中国との歴史的な和解を実現させるなど、米国の利益を最優先に置いた「現実主義の外交」を貫いたキッシンジャー氏から教えを乞うている。
トランプ氏の国家安全保障問題担当の大統領副補佐官には、キッシンジャー氏の側近で、FOXニュースのコメンテーターも務めた女性の保守論客、キャスリーン・マクファーランド氏が就いている。このため、トランプ政権には、新設の国家通商会議(NTC)のトップに指名されたピーター・ナヴァロ氏といった対中強硬派が多い一方で、ニクソン政権下のキッシンジャー外交戦略を受け継ぎ、米中融和を目指すのではないかとの見方もある。
●中国に対しても揺さぶり
トランプ大統領は就任前、正式な外交関係がない台湾の蔡英文総統と異例の電話会談を実施し、「台湾は中国の一部」だとする中国政府の「1つの中国」政策の見直しを示唆した。そして、台湾問題を核心的利益とみなす中国政府の強い反発を招いた。
結局、9日の習近平国家主席との電話会談で、「1つの中国」の政策を尊重することで合意したが、トランプ政権はこの「1つの中国」問題を材料にし、中国に為替や通商面で米国の要求に応じるようゆさぶりをかけたとみられている。
前述のワシントンポスト紙の記事は、トランプ大統領の蔡総統への電話が突発的なものではなく、事前に十分に計画された計算尽くしのものだったと指摘している。
米国などとの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)締結交渉にあたった甘利明前経済再生担当相もこうした見方に与する。甘利氏は10日夜のBSフジ番組「プライムニュース」で、「トランプ大統領は割とその時の思い付きで、極めて重要なことに簡単に触れるように言われがちだが、相当したたかにスタッフが戦略戦術を仕組んでいるのではないかという見方がある」と指摘した。
さらに、「あの大統領だから本当にやりかねないという雰囲気の中で、一番中国が嫌なことをあえてぶつけておいて、ある種、観測気球のように、貿易赤字の解消について真面目に取り組む意志があるのかどうか、踏み絵を踏ませながら行っている戦術ではないか」と述べた。
日本政府には、トランプ大統領の度重なる批判や挑発に踊らされることなく、「マッドマン・セオリーに基づくトランプ政権の次なる手」を見抜く眼力が必要とされているのである。
「マッドマン・セオリー」に騙される日本
ドナルド・トランプ米大統領は型破りで突飛なことをする。予測不可能で衝動的なので、日本をはじめ、世界は注意しなくてはいけない――。もし、あなたがこう信じているならば、すでにトランプ大統領に騙されているかもしれない。
「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領は、これまでに通商問題や為替政策、在日米軍の駐留経費問題でさんざんと日本を批判してきた。しかし、2月10日の日米首脳会談後の記者会見では「われわれは自由で公平、両国にとって利益をもたらす貿易関係を目指す」「日本は重要な同盟国であり、日米同盟は平和と繁栄の礎だ」と日本を持ち上げた。
●ニクソン元大統領の「マッドマン・セオリー」を実践
「狂気」を装いながら、結果的に極めて合理的に振舞っている。駆け引きの一環として、常軌を逸した過激な言動を意図的に繰り返し、交渉相手国に要求や条件を呑ませることに成功している。日本のメディアではあまり報じられていないが、これは、トランプ大統領が尊敬するニクソン元大統領の「マッドマン・セオリー」(狂人理論)を実践しているにすぎない。
安倍晋三首相はそんなトランプ大統領の「狂気な演技」に、外国首脳の中で、いの一番に騙されてしまったかもしれない。安倍首相はトランプ氏の大統領選挙当選後には、極めて異例となる大統領就任前の直接会談をニューヨークで急ぎ足に敢行。さらに、今回の日米首脳会談前には、米国で4500億ドル(約51兆円)規模の市場と70万人の雇用創出を目指す超巨大プロジェクトを矢継ぎ早にとりまとめた。
51兆円と言えば、日本のGDPのほぼ10分の1、日本の防衛費の約10倍にあたる相当な額だ。この投資の原資の一部としては、私たち日本人の老後の蓄えとなる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の積立金をあてる案も検討されている。米国ではなく、需要不足で低成長にあえぐ日本の地でこそ必要な施策ではないかと思えるほどだ。
トランプ大統領は選挙中から、自動車をやり玉に対日貿易赤字を問題視し、日本が輸出を増やすために為替操作で円安に誘導していると批判してきた。日本など同盟国の駐留経費負担が「不公平だ」と主張してきた。安倍首相は、そんな強硬な新大統領を何とかなだめるために、米国にすり寄る形で手持ちのカードを最初から大きく切ってしまった。一方、「マッドマン」を演じるトランプ氏は、一見すると突飛で非合理な行動でも、実に合理的な経済利得を得た。
安倍首相のほか、トヨタ自動車も、大統領就任前のトランプ氏からメキシコでつくる新工場についてツイッターで非難されたことから、豊田章男社長自ら米国に5年間で100億ドル(1.1兆円)を投資する計画を発表した(この投資計画自体は以前から策定されていたものであり、トランプ発言とは関係ないようだが)。
安倍首相も豊田社長も、トランプ氏の雇用創出の要求にすかさず応じる姿勢をみせることで、関係を良好に維持したいとの思いがあったのだろう。
●おじけづいて次々と三振
しかし、野球で例えれば、米国人投手が最初に思いっきり日本人打者にビンボールを投げ、ひるませる。そして、「次もどんなビンボールが来るかもわからない」とおじけづいた日本人打者が次々と三振をしてしまったようなものだ。そして、官民そろって次々と米国に得点を献上している。
「思いやり予算」と呼ばれる在日米軍駐留経費負担も日本の財政難を受け、1999年度の2756億円をピークに減少傾向に転じ、現在は約1900億円で推移している。トランプ大統領の負担増を求める先制攻撃があり、日本側としてはこれ以上、減額することが事実上難しくなってしまった。
さて、トランプ大統領の行動にみられる「マッドマン・セオリー」とはいかなるものか。もともとはウォーターゲート事件で失脚したニクソン元米大統領が、外交交渉で重宝していた戦略だ。国家安全保障政策やビジネスなど様々な場で用いられるゲーム理論の1つとして知られる。
ニクソン元大統領の首席補佐官だったハリー・ハルデマン氏はウォーターゲート事件後に出版した回顧録”The Ends of Power”の中で、ニクソン氏が「マッドマン・セオリー」について次のように語ったことを打ち明けている。
「北ベトナムに、私が戦争を終わらせるためなら、どんなことでもやりかねない男だと信じ込ませて欲しい。我々は彼らにほんの一言、口を滑らせればいい。『あなたもニクソンが反共に取りつかれていることは知っているだろう。彼は怒ると手に負えない。彼なら核ボタンを押しかねない』とね。そうすれば、2日後にはホーチミン自身がパリに来て和平を求めるだろう」
このニクソン氏の策略通り、米国はパリ和平会議で北ベトナムに米国側の条件を承諾させることに成功した。ニクソンがクレイジーだから核ボタンを押しかねないと北ベトナムの指導者に思い込ませることによって、米国は効果的に外交的成果を得たのだ。
2016年12月20日付のワシントンポスト紙の記事によると、トランプ大統領はこのニクソン元大統領の「マッドマン・セオリー」を信奉している。トランプ氏は、予測不能で、長年にわたる国際規範に敬意を払わないという自らの評判を利用し、米国の敵対国をおじけづかせて譲歩するよううまく追い込んでいる。
なぜトランプ氏はニクソン氏を尊敬するようになったのか。
実は、実業家時代のトランプ氏は、ニクソン氏から手紙をもらったことがある。1987年12月のことだ。この手紙の中で、ニクソン氏は、元ファーストレディーの妻が、テレビ出演をしていたトランプ氏を「素晴らしい」と語ったと伝え、「トランプ氏が選挙に立候補すれば勝つ」と称賛した。トランプ氏はこの手紙を大切に保管し、現在はホワイトハウスの執務室に飾っている。
また、トランプ氏は、そのニクソン政権で、国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官を歴任したキッシンジャー氏とも選挙中からたびたび会談してきた。中国との歴史的な和解を実現させるなど、米国の利益を最優先に置いた「現実主義の外交」を貫いたキッシンジャー氏から教えを乞うている。
トランプ氏の国家安全保障問題担当の大統領副補佐官には、キッシンジャー氏の側近で、FOXニュースのコメンテーターも務めた女性の保守論客、キャスリーン・マクファーランド氏が就いている。このため、トランプ政権には、新設の国家通商会議(NTC)のトップに指名されたピーター・ナヴァロ氏といった対中強硬派が多い一方で、ニクソン政権下のキッシンジャー外交戦略を受け継ぎ、米中融和を目指すのではないかとの見方もある。
●中国に対しても揺さぶり
トランプ大統領は就任前、正式な外交関係がない台湾の蔡英文総統と異例の電話会談を実施し、「台湾は中国の一部」だとする中国政府の「1つの中国」政策の見直しを示唆した。そして、台湾問題を核心的利益とみなす中国政府の強い反発を招いた。
結局、9日の習近平国家主席との電話会談で、「1つの中国」の政策を尊重することで合意したが、トランプ政権はこの「1つの中国」問題を材料にし、中国に為替や通商面で米国の要求に応じるようゆさぶりをかけたとみられている。
前述のワシントンポスト紙の記事は、トランプ大統領の蔡総統への電話が突発的なものではなく、事前に十分に計画された計算尽くしのものだったと指摘している。
米国などとの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)締結交渉にあたった甘利明前経済再生担当相もこうした見方に与する。甘利氏は10日夜のBSフジ番組「プライムニュース」で、「トランプ大統領は割とその時の思い付きで、極めて重要なことに簡単に触れるように言われがちだが、相当したたかにスタッフが戦略戦術を仕組んでいるのではないかという見方がある」と指摘した。
さらに、「あの大統領だから本当にやりかねないという雰囲気の中で、一番中国が嫌なことをあえてぶつけておいて、ある種、観測気球のように、貿易赤字の解消について真面目に取り組む意志があるのかどうか、踏み絵を踏ませながら行っている戦術ではないか」と述べた。
日本政府には、トランプ大統領の度重なる批判や挑発に踊らされることなく、「マッドマン・セオリーに基づくトランプ政権の次なる手」を見抜く眼力が必要とされているのである。