孫文 尚武精神

今年2016年は、私にとってフィットネス業界で仕事を始めて20周年、本場中国上海武術界との武術交流は31年、武術経歴は34年めの年になります。

今年は9月4日(日)に「中国武術文化交流大会」を開催しますが「武術文化交流」を謳っている理由は、

中国武術における「伝統文化」を重視していることが、その理由です。

「文化」という言葉は、それぞれに感覚的に理解していると思いますが、私自身の観点としては、

「教養」や「知性」が長い時間をかけて、精神的な進歩した思考に基づいて、地域・社会に浸透した行動・生活様式などの総体。

というものと考えています。

その中で、日本国内ではカタカナ表記での「カンフー」「健康太極拳」「中国拳法」といったような表現で様々な かたち で取り込まれて来ましたが、

これらはすべて武術文化の「ある一部分」の見解とみています。

そしてそれらに「スポーツ競技」のスタイルも入って来て、今や潜在的には、かなりの数の日本人が「中国武術」に関心を持っていると感じます。

しかしながら、常に感じることは武術文化的な不足感を思います。


私はフィットネス・クラブやスポーツ・クラブの指導でずっと20年間、現場に立ち、

様々な日本人社会における健康問題を考慮し、最善の解決方法を編み出し、

今現在にも行っています。


やはりプロフェッショナル:職業家としての視点や努力は最大限行って来ました。

ここで多くの世代を跨り、指導の中で感じたのは、ありとあらゆる面で現代日本社会人の持つ感覚で「文化水準のかたち」というものでした。

それは、やはり戦後日本というものを意識せずにはいられません。

高度経済成長、団塊の世代、米国文化、第2次ベビーブーム世代。

この4つが私達の代では代表するもので、この4つに関係するキーワードは「競争社会」だと思います。

つまり競争の中で作り上げられた世界観です。

こうして見ていけば、昨今の報道で取り上げられる事件の数々はほとんど、その原因や理由が判ります。

無理矢理にでも、人の足を引っ張ってでも、アンフェアな行動に出て、必死に競争社会を勝ち抜いても、辿り着いた「そこ」には何も満たされるものもなく、

ただ浪費や徒らに時間を費やしても虚しさ、しかないのです。


これは今現在に行われている伊勢志摩サミットでの今朝の記事には、

「安倍首相は「現在の経済状況が二〇〇八年のリーマン・ショック前の状況と似ている」と述べ、「対応を誤ると危機に陥るリスクがある」と強調」

世界金融危機

「時宜を得て適切な政策対応を取らなければ、世界経済が通常の景気サイクルを逸脱して、危機に陥るリスクがあることを認識している」

G7宣言:世界経済の「新たな危機」回避に対応-サミット閉幕

今回のG7首脳が行っている伊勢志摩サミットで「中国への懸念を議論する」というものに対して、中国政府側スポークスマンが「今やG7は、時代遅れで力の無いお金持ちクラブ」と評しましたが、とても面白い表現だと思いました。


G7:先進国7カ国(7カ国全てが政府が抱える債務超過、日本政府は今現在抱える借金はGDP比248%で、その他6カ国も借金大国)

世界の政府総債務残高(対GDP比)ランキング

お金持ちで借金大国の首脳が伊勢志摩に集まって豪華な料理を堪能し、美しい景観を楽しんで、先進国各国のトップがそれぞれに「金を使い過ぎて、金がない」という話し合いをするのは滑稽です。

伊勢志摩サミット オバマ大統領のコメント「Nobody knows :誰も知らない」

まるで、綾小路きみまろさんの漫談で「あれから40年。中高年、美味しいものを沢山食べながら痩せる話をして・・・」というのをG7の首脳が行っているのは笑えます。


こんな社会が普通なので、多くは精神的に不安定になっていくのは当然だと思います。

(※当然に今後起こり得る金融危機の影響へ既に対策を持っておくことは重要です)


私自身は13歳から、中国武術の道へ進み、やはり一番重要だったのは、

16歳で1985年に初めてお世話になった上海の武術老師の皆様から、

教わったのは「武術文化」の精神でした。

孫中山故居記念館6

これは武芸十八般の技芸や用法だけでなく、精神文化や思想哲学、養生、それらを総称したものを、

日々、コツコツと老師の皆様から学ぶことが出来たことに大きな感謝を思っています。


そして20歳1989年の春に初めて中国語を話せるようになって、

復旦大学武術隊を訪れ、花妙林老師にお会いしました。


花老師は、上海へ来るといつも親切にしてくれて、武術だけでなく、

上海のあちこちを案内してくれて、

武術文化に関するお話を沢山教えて下さり、

今年もまた多くのことを学びました。

(※私の師爺:徐文忠老師が84歳で逝去された後での、武術精神や哲学は花老師から多く学びました)


今回の大会は、そういうことも含めて「武術文化」交流大会になりました。

文化とは、人間の生活様式の全体。

人がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体。それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり、学習によって伝習されるとともに、相互の交流によって発展してきたものをいいます。

社会的な不満が高まり、ただ人を殴りたい願望で、格闘技芸を訓練したり、見た目の格好を良く見せるものだけを行って人気取りが目的になっているとか、何となく武術を選んだとか、

実在はしない映画や漫画などの主人公への憧れを真似するようなもの、があっても、それはそれで個人の嗜好もあるとは思います。

しかしながら、私は現実主義的な「実際」「実在」を最も重要視しています。

そして今の世の中は、人それぞれが各々に抱えた思いがあって生きています。


私は経験的に、それらの辛さを武術を通じて暴力礼賛などではない忍耐と鍛錬の大事さ、

「悲しみ」や「悔しさ」「苦しさ」を転じて「美徳」と化していく、

それが私にとって大きな武器でもあった「武術文化」であり、

今回は上海の先生方が横浜へ来て下さり、共に切磋琢磨し、今や日本と中国の相互間にある政財界が原因で起こってしまった、

国民的な不信や誤解を無くし、乗り越えるためにも「武術文化」を通じた交流大会を行うこと。

これも、私のできることの中で、尊敬する武術の恩師である上海の先生方への恩返しの「一つ」だとも思っています。


今大会は次世代の皆さんが武術や太極拳の新しい時代を切り開くきっかけ、となって欲しいことと、

私自身は、競技会終了後に、先生方の演武の前座として、龍身蛇形太極拳のエキシビジョンを当日に頑張ります。

「武術文化」のある精神で、武術に打ち込んで精進すれば、環境や条件などが良くなくても、

何時でも、夢や目標が生まれ、泉の水が朽ちることがないように、常に溢れているものです。


自ら、努力を避け、勇気を忘れ、何かしら朽ち果てた井戸のような人間になってはならないように・・・