パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳の神経ネットワークで情報を伝える「ドーパミン」という物質が作れなくなり、手足が震えたり、動作がぎこちなくなったりする難病で、患者は、世界でおよそ400万人と推計されています。

脳の神経細胞が次第に壊れるために発病しますが詳しい原因は分かっていません。

50代後半から60代にかけて発病することが多いとされています。

根本的な治療法はなく、不足しているドーパミンを薬で補って症状を緩和する対症療法が行われていますが、服薬をやめると元に戻ってしまいます。

このため、神経の細胞を移植する治療法や細胞の異常を抑える薬の開発に向けた研究が進められています。


危険因子と保護因子

危険因子・保護因子として報告されたものには、以下のものがある。

これらは疫学的な研究報告であり、パーキンソン病発症との因果関係があるのかはわかっていないものも多く、また相反する結果の報告も少なくない。因果関係が疑われるものに関しては、原因仮説節の環境因子を参照。

危険因子

加齢   ほぼすべての研究で高齢になるほど有病率は高くなり、発症率も60から70代が最も高いとされる。

性    上記のとおり、男女どちらが発症しやすいかは報告が分かれている。

居住場所   都市部に比べて農村部に多いとする報告と、差がないという報告がある。

除草剤・殺虫剤への曝露   パラコート・ロテノン・有機塩素剤などが報告されている。

金属への曝露   マンガン、銅、鉛、鉄など。

ライフスタイル   偏食、飲酒・喫煙をしない、無趣味、仕事中心、無口・内向的で几帳面、など。

食事   動物脂肪、飽和脂肪酸の摂取。総脂肪や総コレステロールについては意見が分かれている。

井戸水摂取   危険因子とする報告が多いが、保護因子とするものもある。

頭部外傷・その他の合併症   頭部外傷は危険因子とする報告がある一方、否定的なものが多い。

保護因子

食事   ビタミンC、ビタミンE、ナイアシンなど抗酸化作用を持ったビタミン類。ビタミンD (食事摂取量ではなく、血清ビタミンD濃度の差による報告。

喫煙   批判はあるが、喫煙が保護作用を持つとする報告は古くから多数ある。

コーヒー (カフェイン)   喫煙同様多くの報告がある。カフェインに保護効果があると考えられる。

非ステロイド性抗炎症薬   イブプロフェンが効果的だという報告が多く、アスピリンとアセトアミノフェンの効果については否定的とされる。


2012年2月12日の新聞の記事です。

パーキンソン病のサル、人のES細胞で症状改善 京大など世界初

人為的にパーキンソン病にしたカニクイザルに

人間のES(胚性幹)細胞を移植して症状を改善させることに京都大などのグループが世界で初めて成功した。

■iPS細胞で3年後にも臨床試験へ

iPS(人工多能性幹)細胞など幹細胞による移植治療の有効性を裏付ける成果で、
早ければ3年後の臨床試験を目指すとしている。米科学誌ステム・セルズで21日
までに発表した。

グループは、京大再生医科学研究所の高橋淳准教授、土井大輔研究員たち。

パーキンソン病は、運動の調節をつかさどる神経伝達物質ドーパミンを作る神経細胞が
減ることで進行する。高橋准教授たちは、ES細胞から作製したドーパミン神経細胞を
カニクイザルの脳に移植、手足の震えや歩行状態などを観察した。

3カ月後から手足の震えがなくなったり、動きが増えるなど症状が改善、1年後も維持された。
ドーパミン神経細胞が生着し、ドーパミンを合成していることも確認した。

人間のES細胞から作った神経細胞で症状の改善を確認したのは霊長類では初めて。


別の新聞の記事

ES細胞 猿のパーキンソン病改善

手足が震えてほとんど動けないパーキンソン病のサルの脳に、ヒトのES細胞から作り出した神経細胞を移植して歩けるようになるまで症状を改善させることに、京都大学の研究グループが成功しました。

ヒトのES細胞を使って霊長類で症状を改善できたのはこれが初めてで、研究グループでは、ヒトへの応用に一歩近づいたとしています。

研究を行ったのは、京都大学再生医科学研究所の高橋淳准教授の研究グループです。
研究グループは、ヒトのES細胞から神経伝達物質のドーパミンを放出する神経細胞を作り出し、パーキンソン病のサル4匹の脳に移植しました。

その結果、脳の中でドーパミンが放出されるようになり、移植から3か月後には、ほとんど歩けなかったサルが歩けるようになったり、手足の震えが止まったりするなど、4匹すべてで症状の改善が確認されたほか、移植した細胞が腫瘍になるなどの異常も見つからなかったということです。

ヒトのES細胞を使って霊長類で症状の改善に成功したのは初めてで、研究グループでは、今後、神経細胞に完全に成りきることができず、腫瘍になるおそれのある細胞を100%取り除く技術を開発するなど、安全性を高めたうえで、4年から6年以内にヒトへの臨床研究を実施したいとしています。
高橋准教授は、「腫瘍を作らずに症状を改善できたのは、ヒトへの臨床応用に向けた大きな一歩だ。今後も実用化に向けた研究を進めていきたい」と話しています。