震災 永井荷風

今の世のわかい人々 われにな問ひそ今の世とまた来る時代の芸術を。

われは明治の兒ならずや。

その文化歴史となりて葬られし時

わが青春の夢もまた消えにけり

團菊はしおれて櫻痴は散りにき。

一葉落ちて紅葉は枯れ 緑雨の聲も亦絶えたりき。

圓朝も去れり紫蝶も去れり。

わが感激の泉とくに枯れたり。 


われは明治の兒なりけり。

或年大地俄にゆらめき 火は都を焼きぬ。

柳村先生既になく 鴎外漁史も亦姿をかくしぬ。

江戸文化の名残煙となりぬ。明治の文化また灰となりぬ。  


今の世のわかき人々 我にな語りそ今の世と

また来む時代の芸術を。

くもりし眼鏡をふくとても 


われ今何をか見得べき。

われは明治の兒ならずや。去りし明治の兒ならずや。




20代に森鴎外に影響を受けました、その鴎外が絶賛して三田文学、文壇に登場したのが永井荷風。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B8%E4%BA%95%E8%8D%B7%E9%A2%A8

日本文学で日記文学を作ったのは紀貫之「土佐日記」に続き「断腸停日乗」を書いた永井荷風が二番目です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%AD%E8%85%B8%E4%BA%AD%E6%97%A5%E4%B9%97

ブログを日々綴りながら様々な事を思い、記録しています。

これもまた自分の一部だと思って。