「人知れず咲くサボテンの花は
困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。
これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」
健太郎が上京して来た。
会長 ご無沙汰しています。引退して2年半になります、出張で上京しました。
そうか光陰矢の如しじゃな、もうそんなになるんかなぁ。
田舎生活も慣れました。故郷のお土産です皆んなで食べてくださいと、広島の銘菓もみじ饅頭を置いた。
会長に上京の挨拶を済ませジムを出た。
健太郎は彼女と駅前の「カフェ、ベローチェ」で待ち合わせた。
健太郎がボクシングを引退して広島に帰省するとき、彼女に一緒に行かないかと「乗車券」を渡して誘ったが、使われることはなかった。
彼女は、両親から反対され健太郎の誘いについて行くことができなかった。と言った。
辛かった寂しかった、この2年半の間に付き合った人もいたが健太郎を忘れられなくて長くは続かなかった。いろんな出来事があった。と彼女は打ち明けた。
束の間のデートに、健太郎は
「今日は逢ってくれて有難う、とても懐かしく癒されました。そして何よりもうれしかった」と言った。
そして明日中に仕事を済ませて夜ジムによってから新幹線で広島に帰ると告げて別れた。
健太郎が京浜東北線の鶴見駅で電車を待っていた。
「一緒に連れてていってくれますか」
「誘って頂いた、乗車券まだ有効ですか」「私まだ持ってます」と、
彼女が現れた。
そこにはスーツケースを持った彼女が立っていた。
彼女は無効になった「乗車券」を捨てることなく大切にもっていた。
乗車券の一緒に行こうとの誘いを受け入れて、彼女は尋ねた。
彼女の「まだ有効ですか」の突然の問いに、健太郎は言葉が見つからなかった。
無言のまま頷いて、彼女のスーツケースを持った。
そして腕を組んだ二人は電車の中に消えた。