サボテンの花、第15話(お嬢様ボクサー) | 横浜さくらボクシングジムのブログ

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横浜さくらボクシングジム 会長 平野敏夫 によるブログです。
ジムでの出来事、ボクシングのこと、その他ジャンルを問わず綴っていきます。

人知れず咲く、サボテンの花は

困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。

これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」

 

会長は来客中で話し込んでいた。

ジユンは窓越しに会釈をして、下に降りた。下に降りた所で「ジユン、何か用があるんか」と、会長の大きな声が追いかけて来た。いえ、練習が終わったので帰ります、と言ってジムを出た。

 

ジュンのボクシング仲間にカナちゃんがいた。

女子ボクサーで名前は白井香苗で、皆んなからは、カナちゃんと呼ばれていた。

兵庫県の芦屋生まれの芦屋育ち、上京して田園調布に住み有名私大で学生生活を過ごした。

芦屋は、「小説芦屋夫人」で関西の高級住宅地として有名になり、田園調布は東横線沿線で「田園調布に家から建つのギャグ」で知られる様になった、共に高級住宅地である。

 

お嬢様ボクサーは、大学を卒業してからボクシングに目覚めた。

スポーツはテニスをやってたそうで、俊敏な動きは持ち合わせていたが

傍目に見てもボクサーと結びつかない風貌で、前例のない経歴の、お嬢さんボクサーである。 

 

本来、お嬢様として育てられ、卒業後は、お嬢様らしい日常がセットされて居たはずである。

 

ジュンは、

カナちゃんが座ってバンテージを巻いて居る姿を見て、「女らしくないな」と、呟いた。

そう言えば最近カナちゃんの所作が男っぽく雑になった気がする。

 

女性アスリートは、他と競い合う日々のトレーニングや試合などの競技会に、らしさが徐々に失せていく要因があると思われる。

カナも練習に熱が入ると、それはより顕著に現れた。

 

そんなある日ジムの仲間が良く利用する駅ビル、シエルの中にあるドトール・コーヒーで

お茶を飲みながら、カナちゃんは、最近実家の父が女性らしくしなさいとしつこく言うのよと、ジユンに打ち明けた。

 

彼女の話を他所らごととして聞ながら

それがカナちゃんかもしれない。 

カナちゃんのボクシングに挑む一生懸命な姿が、人の心を打つのであろう。

そんなカナちゃんがジュンは好きなのかもしれない。と密かに思っていた。