横浜さくらボクシングジムのブログ

横浜さくらボクシングジムのブログ

横浜さくらボクシングジム 会長 平野敏夫 によるブログです。
ジムでの出来事、ボクシングのこと、その他ジャンルを問わず綴っていきます。

人知れず咲く、サボテンの花は

困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。

これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」

 

タイマーがブーと鳴った。

「ストップ」会長が「武」のスパーリングを止めた。

インターバルの30秒が終わり再びタイマーが鳴った。

会長は、「3ラウンド目、ラスト」と言ってから「ボックス」とコールしてスパーリングを再開させた。

 

練習が終わり、事務所で息抜きをしていると

ジム仲間であった彼女が「武」がいつも愛用していたマグカップを私のカップと交換してくれませんかと言った。

彼女にとってリングで輝く「武」は憧れの存在であった。

備前焼の見た目綺麗ではないが、使い込んだ陶芸作家藤原啓のカップで、それなりの趣があり愛着はあったが、「いいよ」と交換に応じた。

事務所に自由に飲めるインスタントコーヒーが置いてあった。とは言え利用しているのはそれなりにキャリアのあるボクサー達であった。

「武」はそれからは交換した、マグカップでコーヒーを楽しんだ。

ウエッジウッドのカップは薄いブルーに人物や風景を浮かし彫りしてあり、欲しかったカップ容器の一つであった。

 

彼女は、その後結婚してジムから姿を消した。

涼しい目をした可愛い娘だった。

 

そして時は流れた。

 

知人の陶芸店に

備前焼の取手の壊れたコーヒーカップを持ち込んで

「とても大切な思い出のカップなんです、修理できませんか」と持ち込んだ女性がいた。

「武」が陶器に興味を持っていることを知る店主は事情を話して修理したカップを見せた。

陶芸作家が作った備前焼は、それぞれ個性があり、窯の火力などの具合によっても出来上がりの風景が変わる。

 

「武」はその修理されたマグカップを見て、自分が使っていたものだと確信した

そしてカップの下に藤原啓の号をみつけ、「やっぱりそうか」。懐かしい恋人に再開した様な感動を覚えた。

 

今もカップにこだわっている、彼女の思いに、

幸せに暮らしているのだろうか、そうであればいいのだけれどと、何故だか勝手に余計な事を想像して胸が熱くなった、そして今の彼女に会ってみたい衝動に駆られた。

サボテンの花6月のアクセスランキングベスト10

 

1位 第21話 握り潰した空き缶とグローブ

2位 第22話 乗車券

3位 第15話 お嬢様ボクサー

4位 第20話 三っの約束

5位 第18話 鏡の中に

6位 第16話 108本の赤い薔薇

7位 第19話 あの娘と故郷に

8位 第13話 蘇る日

9位 第14話 春がやって来た

10位 第3話 車窓からのラブコール

 

「お嬢様ボクサー」と「車窓からのラブコール」が頑張っています。

人知れず咲く、サボテンの花は

困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。

これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」

 

会長が横須賀の合宿所の応接間で横になっている。

その緩んだ寝顔は、夢の中にいた。

 

セピア色になった昔し、むかし、ボクシングに明け暮れていた時代の夢を見ていた。

そこには寄り添う忘れられない女性がいた。

ボクシングの隙間に女性の存在は大きかった。

気持ちが折れそうになった時、モチベーションが切れる事なく維持できたのは彼女が居たからと言っても過言では無かった。

ジムの仲間はライバルであり、自分のレベルアップの為の対象としての仲間であった。スポーツの世界は、縦社会、先輩、後輩の関係はあっても、それでも強いものが 評価された。

自分だけが頼りになる競技スポーツボクシングとはそんな世界でもあった。

男は、外に出れば7人の敵が居るとはよく言ったものである。競技アスリートはそうであるべきだと自分に言い聞かせて生きてきた。

 

その中にあって唯一心が許せたのは彼女であった。

アスリートとしての食事に気を使い、早朝のロードワークもアシストしてくれた、試合後のダメージも優しくケアをした。 

 

その彼女は、明日の見えないヤクザな生活に終止符をうち、「普通でいい、平凡な幸せを求めて、さようなら。でもあなたが好きだから」と書き置きを残して姿を消した。

 

ミニスカートが流行った時代、フォークソングの神田川か流行り、岡本太郎の太陽の塔がシンボルとした大阪万博が盛況のうちに終わり、ベトナム戦争の悲劇は、反戦歌を生み若者に支持された、そんな時代背景のこと。

 

 あれから半世紀50余年が過ぎた

会長も、彼女も、年老いた。

2人は、広く大きな海が好きだった。

 

海の見える丘の上に、

惜別の思いを馳せながら、セピア色化した昔と変わらない景色の海に向かい、

優しく腕を組んで沈み行く夕焼けを眺めている、2人の姿があった。

 

「人知れず咲くサボテンの花は

困難な状況にも耐え忍び、愛や、感情を長続きさせる、力強さや、忍耐力を象徴する花言葉で、唯一ボクサーに似合う花。である。

これは、横浜さくらボクシングジムのサボテンの花達の物語である。」

 

健太郎が上京して来た。

会長 ご無沙汰しています。引退して2年半になります、出張で上京しました。

そうか光陰矢の如しじゃな、もうそんなになるんかなぁ。

田舎生活も慣れました。故郷のお土産です皆んなで食べてくださいと、広島の銘菓もみじ饅頭を置いた。

 

会長に上京の挨拶を済ませジムを出た。

健太郎は彼女と駅前の「カフェ、ベローチェ」で待ち合わせた。

 

健太郎がボクシングを引退して広島に帰省するとき、彼女に一緒に行かないかと「乗車券」を渡して誘ったが、使われることはなかった。

彼女は、両親から反対され健太郎の誘いについて行くことができなかった。と言った。

辛かった寂しかった、この2年半の間に付き合った人もいたが健太郎を忘れられなくて長くは続かなかった。いろんな出来事があった。と彼女は打ち明けた。

 

束の間のデートに、健太郎は

「今日は逢ってくれて有難う、とても懐かしく癒されました。そして何よりもうれしかった」と言った。

そして明日中に仕事を済ませて夜ジムによってから新幹線で広島に帰ると告げて別れた。

 

健太郎が京浜東北線の鶴見駅で電車を待っていた。

 

「一緒に連れてていってくれますか」

「誘って頂いた、乗車券まだ有効ですか」「私まだ持ってます」と、

彼女が現れた。

そこにはスーツケースを持った彼女が立っていた。

 

彼女は無効になった「乗車券」を捨てることなく大切にもっていた。

乗車券の一緒に行こうとの誘いを受け入れて、彼女は尋ねた。

 

彼女の「まだ有効ですか」の突然の問いに、健太郎は言葉が見つからなかった。

無言のまま頷いて、彼女のスーツケースを持った。

そして腕を組んだ二人は電車の中に消えた。

横濱さくらボクシングジムのブログ、

サボテンの花へのアクアクセス数、5月のベストで10です。

 

1,サボテンの花達の物語 16話(108本の赤い薔薇)

2,サボテンの花達の物語 15話(お嬢様ボクサー)

3,サボテンの花達の物語 17話(ひとり酒)

4,サボテンの花達の物語 18話(鏡の中に)

5,サボテンの花達の物語 13話(甦がえる日)

6,サボテンの花達の物語 8話(ランニングシューズ)

7,サボテンの花達の物語 14話(春がやって来た)

8,サボテンの花達の物語 9話(2枚の写真)

9,サボテンの花達の物語 19話(あの娘と故郷に)

10、サボテンの花達の物語 7話(ボトルキープ)