りりとはうす の思い出 その2 (りりとはうすに関する文書) | 五郎のブログ

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桃源郷は山の彼方にあります

「ゴジラ横山(仮名)」 の回顧録より抜粋
 
1982年1月
 私は、会計事務所の仕事を先月で辞め、国道20号線沿いの、家賃の安い下駄履きアパートで生活していた。
窓を開けると自動車の排気ガスと騒音に悩まされるので、窓を開けることはなっかた。日当たりは悪く、暗くて淀んだ空気が充満した四畳半の部屋であった。
押し入れに「さるまたけ」が繁殖しているか、はたまた住人が「マタンゴ」になっているか、という生活環境である。
 狭い空間に趣味で集めた本が積み重なっていて、「ヘルメス文書」、「抱朴子」、「加持祈祷秘密大全」などの表題が並んでいた。
 31日 手帳によれば原宿に魔界への入り口「りりとはうす」が開く。
 
1982年3月
 私の友人が原宿八角館にダイビングショップを開店したことをきっかけとして、原宿で飲む機会が多かった。サンビスタとかオーゴットとか養老乃瀧とかを飲みあるいていた。
現在では、原宿表参道といえば賑やかな場所であるが、当時は、平日の表参道の夜は静かで落ち着いた雰囲気があった。表参道から外れると寂しい感じがするくらいである。
 私は、映画が好きで購読していた「ぴあ」を読んでいて、「りりとはうす」と称する映画を観れるパブが原宿にあるのを知り興味をっ持った。特に「りりと」の名称には惹かれるものがあった。
ユダヤの伝説では、アダムはイブと結ばれる以前にリリス(ヘブライ語でリリト)を最初の妻としていたが、その後アダムがイブを妻とした為、嫉妬したリリスはアダムとイブの血を受け継ぐ赤子を狙う魔女となった。
 子守唄を意味する「ララバイ」という言葉は、ヘブライ語の「リリスよ去れ」という呪文が語源とされると荒俣宏氏は述べている.
 10日夜 原宿のxx通りに面したビルの2階まで薄暗い階段を恐る恐る登り、黒塗りのドアの前に立った私は、その異様な雰囲気に慄然とした。
 魔界への入り口を前に怖気づいてしまい一寸立ち竦んだが、私は意を決してじっとりと汗ばんだ手で金色の取っ手を握りしめてドアを開け、印を結び「唵阿毘羅吽欠裟婆呵」と秘かに唱えて漆黒の闇が支配する空間へと足を踏み入れて行った。
 天井も壁も床も黒塗りの暗い室内には、カウンターと2つのテーブルの席があった。カウンターの奥には、何故か暗闇のなかで朧に輝く不可思議な屈折率のレンズを填めた、奇妙な眼鏡の奥底から怪しげな光をチロチロ放つ眼差しの髭面らの男がいて、口の左片側だけで引きつった作り笑いをして低い声で「いらっしゃい」と出迎えた。
 私はカウンターに座り卓上のメニューを見て、注文を聞きに来たバイトの美少女に「サントリーオールドのボトル」と答えた。
部屋には大型のビデオプロジェクターが据え付けてあり、手帳によればその日「禁断の惑星」を観たようだ。
  私の隣に座っていた若い男は学生で、「クトゥルフ神話的解釈によるゴジラ」の自主制作映画を考えていると熱く語っていたが、飲みすぎてトイレの前でひっくり返りバイトの美少女を驚かせた。
その後、バイトの美少女(実はりりとさん)は勤務時間が終わるとさっさと帰り、私は髭面らのマスターと、彼が魔界の使者であるかを確かめるべく遅くまで飲んでいた。
 
某月某日 魔界への入り口には、誘蛾灯の如く魔物が寄り集まる。勿論、私は「降三世明王調伏の真言」と印の秘法により、自分の周囲に結界を張り護身をしていた。
 ある日、いつもの様に闇の世界への階段を上り、いつもの様に同じカウンター席に座り、ルシファーや第六天の魔王の信奉者とか怪しげな人物達と交わっていた。
ふと気が付くと、いつの間にか隣に座っていた人物が「これ美味しいですよ」と私のグラスに「琥珀色の液体」を注いだ。何故かスーツにネクタイという場に合わない紳士然とした男である。
 魔界からの使者かもしれない彼は「ミナミ」と名乗っていた。明らかに拒否不可能な状況である。心の中で「孔雀明王解毒の陀羅尼」を唱えて、メダルドゥスの如く悪魔の誘いに負けてしまう私ではないと飲み干した。
しかし「琥珀色の液体」の過激な刺激は、私の舌、鼻腔、食道さらに脳内神経までも犯した。悪魔の霊酒に諍うのは困難であった。
 私の意識は混濁し五体は麻痺寸前であったが、私には自然界で鍛えた強靭な精神力と肉体が備わっている。そんな過酷な状況の中で己を保ち魔界に落ちる事なく瀬戸際で人間界に踏みとどまる事ができた。
 「ミナミ」氏は大手の建築設計会社に入り込み、魔界への入り口を作り続けている。彼の設計した建物は南側の非常階段を1段目から31段目まで登ると魔界へ連れ去られる仕様である。31段目を飛び超えると助かる事ができる。
 
2017年2月
 今現在、幸いにも魔界からの使者に負けることなく過ごしている。
当時の記録があるので公開する。記事はバイトの美少女(りりとさん)による執筆であるが、最後の海賊版は最下級悪魔の眷属が配布した悍ましい文書である。上級使者「ミナミ」氏に対する劣等感を露骨に表している。
 松本イヨ氏も最下級眷属*に魅入られた為に魔が差し、先般書類送検となったのは気の毒であった。
(*最下級眷属の正体は83.04.10の花見にて松本イヨの生霊が乗り移った奴である)
83.01
83.02
83.03
83・04
83.05
83・07
83・08
83・09
84・05
海賊版(最下級眷属著)
リリトハウス の思い出 その1