ダシール・ハメットの「血の収穫」と現実世界 | 五郎のブログ

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桃源郷は山の彼方にあります

神田の古書祭りでやっと見つけたハードボイルドの傑作。
鉱山の街からの依頼で探偵社から主人公の「おれ」が派遣されて街に来るが、街に着いたその日に依頼主は射殺される。
「おれ」は事件を捜査する過程で、街が4人のギャングのボスに支配されている事を知る。
腐れ切った街を浄化するべく「おれ」は行動を起こす。だが「おれ」は次々と悪人を打ち倒す様なヒーローではない。
「おれ」は、殺人事件の犯人を探し出し、悪辣な謀略を見抜き、悪党達を罠に嵌めてゆく、悪党同士の血を血で洗う抗争を画策する策士である。
抗争に辟易した悪党の一人(警察の署長でもある)が和解を「おれ」に依頼するも、そのボス達の和解の場で仲間割れをさせ、さらなる全面抗争に導く。
血も涙もない「おれ」は、徹底的な殺し合いを仕向ける。そして悪党達は全滅する。
この小説は黒沢明の映画「用心棒」の原案でもある。
現実の世界では、シリアでの情勢が政府、反政府、ISそれに絡む欧米、露、トルコ等周辺国が混沌としてきている。
悪党共が殺し合うのなら面白いのだが、一般市民が犠牲になっているのが悲惨である。
世界中を巻き込んだ全面抗争は避けてもらいたい。ハメット