藍を継ぐ海
伊予原 新
第172回 直木受賞作
化学と人間ドラマの融合、短編5編
今日も日本のどこかで大切な何かを受け継ぐ人がいる。
「土には、土のなりたい形がある」ー夢化けの島ー
ニホンオオカミの血を引く幻の動物を見た小学生と移住してきたフリーランスー狼犬ダイアリー
謎めいた空き家にたどり着いた公務員ー祈りの破片ー
隕石を拾った妊婦ー星隕つ駅逓ー
ウミガメの卵を孵化させようする中学生ー藍を継ぐ海ー
この短編の中で「祈りの破片」が心に残った
空き家が光っていると、近所からの通報で仕方なく駆けつけた職員
そしてそこには、山と積まれた岩石や瓦やレンガ、コンクリートの破片があった
過去にそれを集めた住人の悲しい歴史、そこは長崎から少し外れた田舎町
昨今どの町でも空き家が増え、そして頼れる身内も少なくなり、誰が何処で亡くなってかわからない
最後の住人が亡くなれば、その家の歴史は途絶えるのか…
これは人ごとではない
我が家も近い将来そうなるかもと思えばゾッとする
この短編の話はそれだけではなく、そこから繋がる人との関わりに読み応えがある
どの短編も面白く、さまざま角度から専門の化学分野もあり人が受け継ぐ歴史の重さがある
今年度の直木賞はさらに読み応えがあります。