原発至近距離の日常 「相馬看花」 | マクロビヨーコのブログ

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念願叶って、夫のセミリタイヤを機に2013年6月、夫婦でシンガポールに移住。家族で住んだ5年+4年間の通い婚(シンガポールと日本を行ったり来たり)そしていよいよ、本番スタート!「クッキング」「国際交流」など、その日心に浮かんできた事をブログに綴っています。

松林要樹監督から、「新作の相馬看花」という映画の

上映初日によかったら来て下さい」というメールを受け取ったのは4月中旬だった。


2年半前、たまたま「花と兵隊」という未帰還兵をテーマにした映画を

見て、その監督が彼であることを知った。
当時、シンガポールから帰国したばかりで、街を行く人々がまるで、

カプセルに入っているように味気なく見えた私は、

日本にまだこんな熱いハートの若者が存在した事に

希望を見出だした思いだった。その時は、映画の内容もよく知らず、

ただ「未帰還兵がテーマのドキュメンタリー映画だったら、一応は

見ておかなくっちゃ!」という気楽な気持ちで一人映画館に向かった。


ところが、その映画の語りさえ、まだ始まらない、ただの

イントロの音楽とジャングルのシーンだけで訳もなく

ボロボロ泣けてきて困ってしまった。あのムンムン匂い立つような

緑濃い熱帯雨林の小道で、そして静かな川辺で、カメラを回していた彼、

そして、未帰還兵として現地に残る事を選んだ兵士たちの気持ち、

彼らを支えた地元の人たちの思い。まだ本編を見てもいないのに

もうすでにビンビン私の心にそれは伝わってきた。

私が70年前、もし、タイやミャンマーに送られた日本兵だったら

きっと軍隊の中で一番先にスタコラ逃げ出して、村に潜り込み

この未帰還兵への道を選んでいたに違いない.。


「花と兵隊」は帰国後3年の間に私が日本の映画館で見たすべての

映画の中で、今でも1番好きだ。この「取材ノート」も本になり、映画も

今はDVDになって販売されている。取材を受けた6人の元兵士たちは、

今まで誰にも言えなかった当時の経験をすべて彼に吸い取るように

聞いて貰った。自分で塗りつぶしたくなるような悲惨な過去でも、

「この人ならば」と思える次世代の誰かに語り継げた人は幸せだ。

これは、彼らに見込まれた松林監督だからこそできた偉業だ。


ジャングルの中で、日本人としての誇りをもって、その文化や技術

を伝え地域に貢献した彼らは「冒険ダン吉」と何ら違わない。

いや、それよりももっと厳しかった。何故なら彼らは長い間、

日本人であることを隠し続けて生きてきた。「あの時、彼が可愛そうだったから、

結婚してあげたの」という現地人の奥さんのコメントがこれを証明している。


監督が取材に再度訪れた日が、偶然、彼らのお一人のお葬式だった

事実には驚かされたが、これも、意味のある偶然だろう。

地元の人達に尊敬されていた彼は、村を上げての立派なお葬式を

賑やかにあげて貰ってどんなにか晴れがましかったことだろう。

彼は、故人となって、その最後の姿をこの映画を通して日本人の我々に

見て貰いたかったんだろうと思うとまた泣けた。今はもうほとんどの方

が亡くなられ、この映画が彼らの貴重な遺言となった。

その後、私は夫を連れてもう一度この映画を見に行き、生まれて

初めて、激励の「ファンレターもどき」ニコニコを彼に送った。


5月26日の朝、そんなことを、色々思い出しながら、電車に揺られて

東京渋谷の「相馬看花」上映の会場に向かった。


映画は、いきなり彼の仕事場の大揺れから始まった。

2011年4月。たまたま知り合いになったという南相馬の

市議会議員田中京子さんに便乗して、彼は20キロ圏内までも

進んでいく。当時マスコミの誰もが入れなかった危険区域に、

私もまた彼に手を引かれて連れられていくような緊迫した臨場感があった。

そこには・・・野生化した空腹の犬たち、放たれ生き延びた牛馬、

腐った卵にたかったハエ、お客のいないガソリンスタンドの

ピカピカ光る電子掲示板、それに、信じられない事には、一組の

「老夫婦の日常」があった。。。後は見てのお楽しみひらめき電球


南相馬市原町は、元々半農半漁の町で、農場の機械化が始まる

までは、馬が大切な労働力だった。「塩とタバコ」が町の産業として

町民の生活を支えていた。昔は学校から帰った子供も総出で、

家族でタバコ作りに励んだという。仮設住宅に暮らすおばあさんの

ピンセットのように折れ曲がった腰がかつての農作業の厳しさを

物語っていた。


「自分たちは、あの時、原発の怖さを知らず原発設置に反対することも

なかった。津波だけならまだしも、放射能の汚染で今、何もかも

土地までも奪われて、いつ自宅に帰れるかさえわからない。

本当に我々は無知だった。」住民のお一人が吐き出すように言われた。

20キロ圏内の田中さんの自宅が、まるでモデルルームのようにお洒落な

庭付きの新居だったことも悲しい。


私は、映画を見ながら考え続けていた事を最後に監督に聞いてみた。

「あの町が昔のままで、原発なしに、ずーっと皆がタバコと塩だけで

生活をしていれば、よかったと思われますか?」

「ーーそれは、わかりません。。」彼は答えた。


海外ではすでに、第2部も話題になっているらしい。


松林監督、あの3畳一間の仕事場に、あなたが持てる

エネルギーのすべてをギューーッ!!と凝縮させて、そして、

思いっきりドッカーーン爆弾と世界に向けて発信してくださいアップ

「相馬看花」、シンガポールでの上映を友人たちと待っていますラブラブ

  


http: //somakanka.com/


「相馬看花」6月15日(金)まで 10:30~、18:55~

オーディトリウム渋谷(ドンキーホーテの裏)
03(6809)0538



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5月26日 上映挨拶(オーディトリウム渋谷)
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