杭のメイカーとしては、技術力の高い会社というのがぼくの印象である。
既製コンクリート杭の設計マニュアルは、若い頃、杭設計のテキストとしていた。
各種杭のカタログも様々なメイカーの中でも内容の濃さ、見易さではトップクラスである。
また、都市の狭い敷地、現場への狭い道路でも対応できるコンパクトな工法として開発された“City Guy工法”は、画期的なものでいくつかの現場で採用した。
鋼管の先端に羽根を付け、回転しながら地盤に圧入する工法“EZパイル”は多くの同様の工法が生まれた。
技術力が高く、先端を走る杭メイカーであると思う。
いや、あったというべきか。
なんで、こんな事態になってしまったのだろう。
City Guy工法(今はないようだ)は何度か使用したが、ぼくは旭化成の杭を使用していない。 はっきり言うと敢えて避けていると言ってもよい。
ある物件で、旭化成建材の杭を使用した時のことである。
ぼくは小さい事務所であり、工事規模も小さく、必然的に建設会社も中小規模のものである。
その物件を担当した請負会社も小さな規模であった。
工事費の収支にも常に悩んでいた。
杭工事を請け負った旭化成建材は、工事費についても支払についても、非協力的であった。
詳細はよく分からないが、設計事務所から、二度とあの工法は使わないでほしい。と言われたので、相当に高飛車だったようだ。
これから推測するに、工事金額に対する本社からの締付けが相当に厳しく、それが今報道されているような事態を招いたのではないだろうか。
そうであるならば、技術者としてはやってはいけないことではあるが、担当者に同情する気持ちを持ってしまう。
さらには、現場で実際に施工をしているひとたちである。
掘削時の抵抗値を測る機器が故障したとの話がでていたけれど、熟練のオペレータならは、掘削時の状況で支持層に達しているかは分かったはずだ。
杭打ちの立会をしたことがあるが、硬質な地盤に達すると杭打ち機が振動した。
全身泥まみれになって黙々と作業をする技術者、職人に対するレスペクトを忘れないようにしている。
今回の一連の杭工事の不祥事。
頭を下げるひとたちを見ていると、末端に責任を負わせて逃げようとしているようとしか見えなかった。
しかし、会社への立ち入り検査を行う可能性が大きいとのこと。
当然のことだ。 トカゲの尻尾切りは、絶対に許されない。