(絵 ベッキー)

 

絵は、©️響け!製作委員会 

『響け!ユーフォニアム アンサンブル・コンテスト』のワンシーンを

ファンアートに描いて頂きました。

 

 

 

これは、京都アニメーションの人気アニメ

『響け❗️ユーフォニアム』シリーズを
原作にしたファンアート(短編小説)です。

 

 

じゅんまさに捧ぐ…

 

 

 

【ふたりはアイドル】

 

(井上順菜…じ、堺万紗子…ま、さかもっちゃん…さ)

 

じ・ま ペッパー♫

 

    警部っ♫

 

    邪魔をっ、し、ないいーでぇーえー♫

 

 

ふたりがリズムをそろえて、ハモる。

 

息はぴったり。

 

マイク代わりのスティックも、けっこうさまになってる。

 

歌が終わる頃には、吹部のメンバーが聴衆として、けっこう集まってきていた。

 

ノリノリのふたり。

 

じ みんな、今日は来てくれて、ありがとう!

ま 最後まで、楽しもうねっ!

 

やんやの喝采をおくるメンバーたち。

 

こういうバカ騒ぎはふだんはやらないが、

嫌いではない。

 

むしろ、好き。

 

楽しいことはなんでもやってみたい。

やってみよう!

それが演奏の肥やしにもなるから。

 

この前、パート練の指導に来ていた、

プロのパーカッション奏者で北宇治OBの

さかもっちゃんが言ったこと。

 

さ まじめに練習するだけじゃあ、いい演奏はできない。なぜか、わかる人?

 

じ ハイ。

 

さ 井上さん、どうぞ。

 

 

じ まじめに練習することは基本です。

  でも、そればかりだと、苦しくなるときもあると思います。

  それが続くと、演奏にもよくないんだと思います。

 

さ そうそう。わかってるねー。さすが、パーカスのリーダーだね。

  そう、音を楽しむ、と書いて、音楽!

  演奏する方が楽しまないと、観客には伝わらない。

  僕はそう思ってる。

  逆に、演奏を楽しんでると、その楽しさが会場全体に伝わるもんなんだ。

  それは、時として、技術をこえることがある。

  ただ単にうまいだけの演奏なら、機械だってできる。

  人がやる必要はないかもしれない。

  でも、ほんとうに人を感動させる演奏は、機械じゃできない。

  人だからできると僕は思う。

  自分が感動したこと。笑ったこと。楽しんだこと。

  そんなこんなを演奏にぶつけるんだよ。

  それが表現力ってやつ。わかる?

 

パーカス一同 はいっ❗️

 

そんな話を聞いたものだから、順菜は万紗子を誘って、作戦会議を開いた。

そして、カラオケで歌の練習をすることになったのだった。

 

吹部の練習後に「ちょっと用事が…」と言って帰宅してから、

カラオケボックスに行き、ふたりでデュエットできる歌を探してると、

 

ま あ、ピンクレディって、あるねー。

じ 懐メロでしょ。昭和のアイドルスター。テレビで観たけど、かわいかったな。

ま じゃあさ、ちょっと歌、聴いてみようよ。

じ それじゃ、YouTubeで。

 

ふたりはイヤホンを分け合い、YouTubeに流れる古い映像を観ながら、歌を聴いた。

踊りながら楽しそうに歌うふたりの少女。

コスチュームがセクシーなのが特徴だ。

 

じ なんか、攻めてる格好だね。

ま うんうん、攻めてる攻めてる。

じ さすがに、コレは真似できないかな。

ま えー、やってみたら? 後輩の男子、きっと喜ぶよ!

じ だから、嫌なんじゃん。女子だけなら、いいけど。

ま それもそっかー。じゃあ、こっそりやる? 誰にも言わないで。

じ うん、練習のつもりで。誰かに気づかれたら、それは仕方ないってことで。

 

そうして、学校でゲリラライブをこっそりやることが決まった。

 

じ でも、やるからには、しっかり練習しないとね。

ま うん、そうだね。文化祭のステージに出るくらいの気持ちでやろっ!

 

根が真面目なふたりは、何をするにも真剣に取り組むのだった。

 

・・・

 

 

一曲だけのゲリラライブのつもりだったが、みんなにアンコールをせがまれて、苦笑するふたり。

 

じ どうする、万紗子?

ま じゃ、もう一曲、やりますか!

 

ふたりの歌声が階段に響き渡る。

その日だけのシークレットなコンサートは大盛況だった。

 

後日、

誰かが撮ったふたりの写真を見つめながら、

万紗子は、

 

ま こりゃあ、いい部誌のネタになりますぞ…。

 

と、ほくそ笑むのだった。

 

 

初出 2024.11月