私が作家になったのは、両親のおかげと言ってよい。

作家デビューした2011年、私は迷っていた。

文芸社からの自費出版だが、本屋やAmazonで自分の本が買える

というのは、とても魅力的な提案だった。

友人も数名、文芸社からの出版に挑戦していたことも、

私には大きな影響を与えていた。

でもなあ、先立つものがない…。

家計に影響するような出費はできないと私は考えていた。

その考えは今も変わらない。

だからお前はダメなんだ!と叱責されそうな気もするが、

今の家庭生活を危険にさらすわけにはいかないと考えていた。

そこで降ってわいたような遺産の生前贈与の話。

その額はちょうど出版費用を賄えるものだった。

それで私の心のスイッチが『出版する』に切り替わったのである。


人生において本当に必要なものは手に入ると言われている。

臨時収入に恵まれることは、けっこうよく耳にする話だ。

それが自分の身にも起きていたというお話。