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ニニギくんは、サクヤヒメに張られたほおの痛みに、はっと我にかえった。

ぶった…。ぼくのこと、ぶったね…。
ママにもぶたれたことないのに❗️


ニニギくんがそう言うと、サクヤヒメは

だまらっしゃいっ❣️

と、ピシャリと言い放った。

ヤンヤと心の中で拍手する御一行様たち。

あまり怒られたことのないニニギくんは、ビクッとなり、おとなしくなった。

なんですか、さっきから黙って聞いておれば、グダグダと。
わたしが浮気した証拠でもあるのですか。
あるなら、持っていらっしゃいな。
そのようなもの、あるはずもございません。
あなたにみさおを捧げるまで、この身を殿方に触れさせたことなどございません。
ひとを疑うならば、確たる証拠というものを確認してからになさいませ。
そうでないと、あなたのご一存で、濡れ衣を着せられるひとが続出してしまいます。
そんな暗黒の王になってはいけません。

サクヤヒメの話が、なぜか王道論になっている。どうも、ただの痴話喧嘩には終わりそうにない。

よいですか。
地上で王というものは、神様をおまつりする祭儀を司る、祭儀王ということなのです。
懐疑心の強い王など、誰がついてくものですか。

これを聞いたニニギくんの中の疑心暗鬼、

やべっ!おれのこと、気づかれてる…

そう思い、しゅんと姿を消した。

ひとに取り憑く鬼は、取り憑いていることが見破られると、そそくさと逃げ出すものである。

続く

 

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