前の話
ニニギくんとサクヤヒメは、直接会わないながらも、互いに憎からず想い合っていた。
天孫族御一行様は、煮え切らなくて、かがみばかり見ているニニギくんがもどかしく、一計を案じた。
やはり、ここは、地上のしきたりに合わせるべきだろう。
地上では、妻恋い(つまごい)という慣わしがあり、女性のもとへ男性が訪ねていき、想いを伝えて、相手が了承すれば、夫婦(めおと)になるのだという。
めおとという言霊は、女(め)男(おと)ということで、女が先に来ている。現代は男性上位の社会であるが、古代は女性上位だったことが、この言葉からも見てとれるのは興味深い。
というわけで、ニニギくんに、
なんでも、美しい姫君を見かけたって話ですよ。見に行きませんか?
と誘った。今でいうとガールハントに行こうと誘っているようなものか。
ニニギくんは、
もしかして、あのかがみの君かな?
とドキドキしたが、このままではらちがあかないこともわかっていたので、ついていくことにした。
続く
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