あまんきみこ作

きつねのおきゃくさま。

これはすげえ絵本だ❗


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読み聞かせ きつねのおきゃくさま


きつねのおきゃくさま
あまん きみこ

むかしむかし、あったとさ。
はらぺこ狐が歩いていると、やせたひよこがやってきた。がぶりと
やろうと思ったが、やせているので考えた。
太らせてから食べようと。
そうとも。よくある、よくあることさ。

「やあ、ひよこ。」
「やあ、狐お兄ちゃん。」
「お兄ちゃん?やめてくれよ。」
狐は、ぶるるとみぶるいした。
でも、ひよこは目をまるくして言った。
「ねえ、お兄ちゃん。どこかにいいすみか、ないかなあ。困ってるんだ。」

狐は、心の中でにやりと笑った。
「よしよし、俺のうちにきなよ。」
すると、ひよこが言ったとさ。
「狐お兄ちゃんって、優しいねえ。」
「優しい?やめてくれったら、そんな台詞。」
でも、狐は、生まれて初めて「優しい」なんて言われたので、少しほうっとなった。

ひよこを連れて帰る途中。
「おっとっと、落ち着け落ち着け。」
切り株につまづいて、転びそうになったとさ。

きつねは、ひよこに、それは優しく食べさせた。そして、ひよこが
「優しいお兄ちゃん」と言うと、ぼうっとなった。
ひよこは、まるまる太ってきたぜ。

ある日、ひよこが、散歩に行きたいと言い出した。
ーーはあん。逃げる気かな。
きつねは、そうっとついていった。
ひよこが春の歌なんか歌いながら歩いていると、やせたあひるがやってきたとさ。
「やあ、ひよこ。どこかにいいすみかはないかなあ。困ってるんだ。」
「あるわよ。狐お兄ちゃんちよ。あたしと一緒に行きましょ。」
「きつね?とうんでもない。がぶりとやられるよ。」
と、あひるが言うと、ひよこは首をふった。
「ううん。狐お兄ちゃんは、とっても親切なの。」
それをかげで聞いた狐は、うっとりした。そして、「親切な狐」と言う言葉を、五回もつぶやいたとさ。

さあ、そこで急いでうちに帰ると、待っていた。
狐は、ひよこと 家鴨に、それは親切だった。そして、二人が「親切なお兄ちゃん」の話をしているのを聞くと、ぼうっとなった。
家鴨も、まるまる太ってきたぜ。

ある日、ひよこと家鴨が、散歩に行きたいと言い出した。
ーーはあん。逃げる気かな。
狐は、そうっとついていった。
ひよこと家鴨が夏の歌なんか歌いながら歩いていると、やせたうさぎがやってきたとさ。
「やあ、ひよこと家鴨。どこかにいいすみかはないかなあ。困ってるんだ。」
「あるわよ。狐お兄ちゃんちよ。あたしたちと一緒に行きましょ。」
「狐だって?とうんでもない。がぶりとやられるぜ。」
「ううん。きつねお兄ちゃんは、神様みたいなんだよ。」
それをかげで聞いた狐は、うっとりして、きぜつしそうになったとさ。
そこで、狐は、ひよこと家鴨とうさぎを、そうとも、神様みたいに育てた。
そして、三人が「神様見たいなお兄ちゃん」の話をしていると、ぼうっとなった。
兎も、まるまる太ってきたぜ。

ある日。くろくも山の狼が下りてきたとさ。
「こりゃ、うまそうなにおいだねえ。ふんふん、ひよこに、あひるに、兎だな。」
「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」
言うなり、狐は飛び出した。
狐の体に、勇気がリンリンと涌いた。
おお、戦ったとも、戦ったとも。
実に、実に、勇ましかったぜ。
そして、狼は、とうとう逃げていったとさ。

そのばん。
狐は、恥ずかしそうに笑って死んだ。

まるまる太った、ひよこと家鴨と兎は、にじの森に、小さいお墓を作った。
そして、世界一優しい、親切な、神様みたいな、その上勇敢な狐のために、
涙を流したとさ。
とっぴんぱらりのぷう