【龍と少女の物語】

あなたの心に棲む龍を見つけませんか?

序文

世の中には、いろんな不思議なことがあり、
多くの人、特に大人はそれに気づくことができない。
子供は比較的、そうした能力を持っていたりするものだが、親から否定されると、気のせいだと思うようになり、いつしかその能力をなくしてしまう。
思いが能力を開花させもするし、能力にフタをすることもある。
思いの力を思い出せ❗️

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まりちゃんは、ちょっと不思議な女の子。
雨が降る前には空気の匂いが変わるのを感じる。
地震が起こる前にキーンと耳鳴りがする。
植物の精霊や妖精さんが部屋の中を動いてるのが見える。
人のオーラが見える。
この世にいない人の声が聞こえる。
神様の声が聞こえる。
などなど。

まりちゃんには当たり前のことが、まわりの人には当たり前ではないみたいで。
家族に言っても信じてもらえず。
(へえー、不思議ね、で済まされてしまう)
学校で話すと嘘つき呼ばわりされ。
(まりちゃんは嘘つきだから、一緒に遊んじゃダメ、と友達に無視される)
いつしか、心を閉ざし、誰にもなにも言えなくなり。

それでも、いろんなものが見え、いろんな音が聞こえるので、
家にもいたたまれなくなり、どこから遠くに行こうと家を出た。

ふと、思いついたのは近くの山の中腹にある公園。
小さい頃、家族で車に乗って、遊びに行ったっけ。
楽しかったなあ。

まりちゃんの足は無意識に山の方へ。
車では近くても、歩いて行くのは大変。
まして、子供の歩幅では、大人よりも時間がかかる。

まりちゃんは、
てくてく・・・
てくてく・・・
と歩き続けた。

やがて、日が暮れそうな逢魔が時を迎え、
山の道はどんどん暗くなる。
まりちゃんは内心ドキドキしながらも
てくてく・・・
てくてく・・・
と歩き続けた。

やがて、公園に到着したまりちゃんは、ほっと一息ついて、空を見上げた。
すると、大きな龍のような形をした雲が、まりちゃんを見守るように浮かんでいた。
それを見ると、まりちゃんはなんだか安心して、ベンチに座り、足をブラブラさせるのだった。

これからどうしようかな。
もうすぐ日も暮れて暗くなっちゃうし。
ママたちが心配するかもしれないな。

まりちゃんは、どうすればいいかわからなくて、もう一度、空を見上げた。
空の龍のような雲が、眼をぎょろりと見開き、まりちゃんになにかをささやいてるように見えた。

まりちゃんは、ハッとして、公園の端っこの方に向かうと、そこには古井戸があった。
井戸の中は真っ暗で、なにも見えない。




まりちゃんは、小石をつまんで、井戸の中に投げいれてみた。

ぴちょーん…

小石が波紋をうがつ音が聞こえてきた。

この井戸は、どれくらい深いのだろう。

まりちゃんは、背伸びして、井戸の中をのぞこうとしたが、暗くてなにも見えなかった。

まりちゃんは怖くなり、井戸の中をのぞくのをあきらめ、井戸の近くで立ったまま、モジモジしていた。
なんだか離れがたく感じられたのだ。

すると、井戸の底から

ビュオウッ❗️

と、生暖かい風が、空に向かって吹き上がったのだった。




まりちゃんは、それはもうびっくりして、空を見上げた。

空には、水色の龍が、先ほどの龍のような雲の中に入ってゆくのが見えた。

これほど龍をはっきりと見たのは初めてだった。
まりちゃんが大きく眼を見開くと、その眼の中にはキラキラと光がまたたき、龍が見えた喜びの色が浮かんでいた。

わたし、龍を見ちゃった。

まりちゃんは、なんだかとても嬉しくなった。
それまでクヨクヨしていた悩みがどこかへ飛んでいった。
空の龍からまりちゃんへ、キラキラしたエナジーが降り注いでいるように感じた。




わたし、今なら、空を飛べるかも。

まりちゃんは眼を閉じて、両手をあげてみた。

すると、まりちゃんの意識は身体を抜け出して、空へグングンと昇っていった。

あっという間に龍の前まで昇ると、龍はニカッと笑い、まりちゃんを頭の上に乗せて、空の散歩に出かけるのだった。

初めて空を飛ぶのに、まりちゃんはなんだか初めてじゃない感じがして、とても楽しかった。

でも、下界の街の灯りの中に自分の家の灯りが見えたときに、

あ、帰らなきゃ❗️

と強く思ったのだった。

すると、次の瞬間、まりちゃんは、我にかえり、井戸のそばに突っ立ったままの自分に気づいたのだった。

まりちゃんは、ダッ❗️とダッシュで走り出した。
なんだか家が恋しかった。
早く家に帰りたかった。
パパとママが待っている家に。
家族の待っている我が家に。

山道を駆け下りてると、街の灯りがとても綺麗に見えて来た。

わあ、きれい。
パパ、ママと一緒に、この風景を教えてあげようっと。

まりちゃんは息をはずませながら、山道をかけ降りるのだった。

おしまい



原案 まりりん

作  よっくる

協力 冨田佳音

2020.10月 初出


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まりちゃんからのメッセージ

私が井戸のそばにたたずむまりちゃんの絵を思い浮かべると、絵のまりちゃんが私の手を引いて、空を飛んでくれた。

わたし、こんなこともできるのよ
すごいでしょ
あなたにもできるよ
できないっていう思い込みを手放せば
誰だって自由に空を飛べるんだよ

そう伝えてくれたのだった。

人は生まれてからの経験が時には教訓にもなるが、時にはトラウマとなり、いつまでも引きずってると、できることもできないと思い込む。

昔の自分にはできなかった。
だから、今もできない。

そうやって、セルフブレーキを踏んでるんだよね。

親からの教育が暗示となり、心を縛ることもある。
親から、『(あなたは子供なんだから)やっちゃいけない』と言われたことが、大人になっても、自己暗示として、『やっちゃいけない』と思い込むことがある。

もう手放していいんだよ。
卒業していいんだよ。

そう、まりちゃんに言われたような気がする。

よっくる