【ホヌのなみだ】


これはハワイに伝わる物語を超訳したものです。


よっくる


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海亀の子、ホヌは、人間の子供と遊びたくて、人間に姿を変え、浜辺で子供達と楽しい時を過ごします。


一日中遊んだ夕暮れどき。

ホヌはみんなとすっかりなかよくなり、満ち足りた気持ちになりました。


ところが、そこに海から思わぬ襲撃者が現れました。


大きなサメが牙のたくさんついた口を大きく開けて、砂浜へと侵攻してきたのです。


子供達のうち、何人かがサメの口に飲まれようとしたその時!


ホヌは海亀の姿に戻り、サメの口の中に突撃したのです。


硬い殻で覆われたホヌの甲羅を噛んで、大事な歯が欠けたサメはほうほうのていで海に逃げていきました。


ですが、ホヌも首に致命傷を負ってしまいました。


浜辺に横たわる海亀のホヌ。

そのまわりに集まる子供達はみんなホヌに感謝して、泣いていました。


そんな子供達の姿を見て、


『ああ、よかった。これでよかったんだ


とホヌは安心して目を閉じました。


閉じたホヌの目からはひとすじの涙が流れていました。


やがて、ホヌのむくろは光の粒に包まれました。


ホヌの体から魂が抜け出して、光の粒とともに空を泳ぎ回ります。


浜辺に自分の亡骸と子供達を残して、

ホヌは光の海へと還っていきました。


自分が生まれる前にいた、もとの世界へ。


よっくる


#ハワイの伝承 #ホヌ #海亀