FB友達のオリメタカコさんに応援アートを描いて頂きました(^ ^)


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「青き龍と白き龍の物語」は書籍で出版しています。

 





その中で、後半のクライマックスは、白き龍の魂を宿す龍王の后の演説です。

その中に私が伝えたいテーマが込められています。

その一部をご紹介します。

 

・・・

 

私と彼女は壇上に立った。

多くの民衆が私たちの目の前にいた。

今までの私たちは静かな為政者だった。

このように民衆を集めて演説をすることなど、皆無だった。

 

それにしても、この国にこれほどの人がいたとは。

 

あとで聞いた話では、私たちが演説をするという話を聞いて、遠国からも人々が訪れていたようだった。

 

まず、私が口を開いた。

 

「わが龍の国に住まう全国民よ。私は龍王である。

私は龍の化身として、この国を治めている。

この姿は仮の姿、私の本体は龍である。

龍である私は死を知らぬ。

遠い昔から生き続け、この国を見守ってきた。

龍には永遠の生命があるのだ。」

 

私はここで言葉を切った。

誰もが息を飲んで、次の言葉を待っている。

 

「すべての人間たちよ。お前たちの生命ははかない。今日生まれたものがいるかと思えば、死んでゆくものたちもいる。

私の目から見れば、お前たちはすぐに死んでしまう存在なのだ。

だが、それを嘆き悲しむことはない。

死とは偉大なる恩兆であり、神の情けだ。

今からわが妻の語ることを聞けば、それがわかるだろう。」

 

私は言葉を切り、彼女へとつないだ。

 

彼女は静かに語り始めた。

 

「みなさん…、私は今日は為政者としてではなく、みなさんの友として、この壇上におります。

ですから、私の言葉を是非、友の言葉としてお聞き下さいませ。

 

太古の昔より、この星は存在していました。

そう、みなさんが立っているこの大地、みなさんが見上げるこの空、そしてみなさんが住むこの国ばかりでなく、この世に存在するすべての国々、すべての人々、すべての存在がこの星を形作っています。

 

私たちはこの星において家族であり、ともに生きている仲間です。

 

そして、この星は、私たちが知らない太古の昔から存在し、その時代、その時代に住まう生命たちを育んできたのです。

 

私たちはこの星の大きな愛に育まれて、今まで育ってきました。

誰一人の例外もなく、愛されて、生かされてきたのです。

 

そのような中にあって、私は一つの悟りを得ました。

それは、ある方との出会いから始まりました。」

 

どこかで鳥の鳴く声が聞こえ、しーんと静まりかえった広場にこだました。

 

彼女の声は静かで、かつ澄み切っていて、広場のすみずみまで届いているようだった。

 

「この国には、何人か、巫女と言われる方がおわします。

巫女は神の言葉を語るものとして、みなに尊敬され、崇拝されています。

私もそんな巫女の一人と出会い、魂を揺り動かされました。

 

その巫女は私に言いました。

 

『あなたはずいぶんと長い、魂の記憶を持っておられるようだね。

こんな人、今まで見たことないよ。

あなたがこの世に生まれたのは最近だが、その前はずいぶんと長い生を生きていたようだ。

普通の人ならいくつかの過去生が後ろに見えるんだが、あなたは前世が神々しく光輝いておる。

そして、あなたの前世のその果てが私には見えん。

はてさて、このような方が、なにゆえ、この世に生まれられたのか…。

あなたは本来なら、あちらの世界で神として多くの魂たちに光を与える役割の方なのではありませんか?』

 

 私は答えました。

『いえいえ、私はそのようなものかどうかわかりません。

何しろ、生まれる前のことなんて、覚えていませんもの。』

 

『まあ、この世に生まれるときに、それまでの記憶をいったん、あの世においてくるのが、しきたりだからの。』

 

『ただ、私は最近こう思いますの。

私がこの世に生まれたのは、たった一人の方をお救いするためではないかって。』

 

『それは、あなたのとなりにいなさる、立派なお方かえ?』

 

『まあ、巫女様、見えるのですか?』

 

『うむ、見えぬものを見る、この目にはな。

姿がぼんやりと見えるだけじゃが、そなたへの強い愛のエネルギーが伝わってくるぞえ。』

 

『ああ、間違いないです。それこそ、私の愛するお方ですわ。』

 

『ただ、その方は、相当傷ついておるようじゃ。自分の心を固くガードしておる。』

 

『そのガードを溶かして差し上げるのが私の今生の使命と心得ております。』

 

『よほど深い魂の縁(えにし)を持っておられるのじゃろう。もったいないことじゃ。』

 

彼女の話は、私への深い愛で彩られていた。

私が初めて聞くこともたくさんあった。

 

それは、本当のことのようでもあり、また、物語のようでもあった。

 

だが、不思議と違和感は感じなかった。

 

そうだろうな、という思い。

 

私も彼女が生まれてくることを長い間、待ち続けていた。

 

そして、今、彼女がここに、私のかたわらにおり、私への愛を語っている。

 

それで充分だった。

 

彼女の話を夫婦で聞いているものは、いつしか互いの手を握りあった。

 

彼女の話を恋人同士で聞いているものは、互いの顔を見つめあった。

 

彼女の話を一人で聞いているものの目は、彼女に注がれ、彼女の話を一言も聞きもらすまいとしていた。

 

あるものは目を閉じ、彼女の話を音楽のように聞いていた。

 

あるものは自分の頭の中で彼女の話をビジュアル化していた。

 

それぞれが思い思いに彼女の話を聞き、受け入れ、楽しんだ。

 

それは、一つのイベントだった。

 

彼女の優しい波動が会場全体を包み込み、聴衆一人一人がその波動に共鳴し始めていた。

 

彼女の話は愛の歌のように、聴衆の耳に届いた。

 

彼女の暖かい波動は会場全体をすっぽり愛で包み込んだ。

 

その中で、皆の思いが一つに溶け合う瞬間が何度もあった。

 

宇宙からの愛のバイブレーションが、空から、大地から、降り注ぎ、わき上がり、会場全体を明るく照らした。

 

目をつぶっていたものは光の爆発を、乱舞を見たことだろう。

 

私には、会場にいったん集まった愛のエネルギーが、この星全体に広がり、この星を包み込み、その傷を癒しているように感じられた。

 

愛のエネルギーワーク。

 

彼女の語る話以上に、彼女にはそのようなエネルギーの流れを作り出す能力がある。

 

私は今まで秘められていた彼女の能力に、ただ驚くしかなかった。

 

「…そういうわけで、私は自分の中に魂というものがあることを知りました。

 

この魂というのは、本当の私たち自身です。

今、生きている私という存在は、この世限りの存在かもしれません。

でも、死んでしまったとしても、今の肉体を失ったとしても、魂は永遠なのです。

この世に別れを告げたあと、私たちは本来の自分である魂に帰ります。

 

そして今の私の人生経験をその記憶に加えて、新たな旅に出るのです。

 

それを、誰一人の例外もなく、行っているということ。

 

それを知ったとき、私は救われた思いがしました。

 

なぜかというと、私は、私の愛する人をおいて、いつか旅立ってしまう。

 

今まで私も、人より長く生きさせて頂きましたけど、自分の親しい方との別離の悲しみは、送る側からしてみれば、大変つらいものです。

それが、いつか私が送られる側になった時、残していく愛する人のことを思うと、つらくてたまりませんでした。」

 

そう言って、彼女は私の方を見つめた。

私は平静を装ったが、常日頃からの私の悩みはまさにそれだったので、彼女に気づかれていたのかと、内心動揺していた。

 

「…でも、魂が永遠であるということに気づくことができれば、別離の悲しみはほんのひとときのことだと思うことができます。

そして、また、あちらの世界でお会いしましょうと、安らかな気持ちでお別れを言うことができます。

このことに気づいてから、私は親しい方との別れを耐えられるようになりました。

 

これは永遠の別れではないということがわかれば、いずれ来る再会の時を楽しみにすることができます。

 

今日は、皆さんにそのことを伝えたくて、お話させて頂きました。

どうもありがとうございました。」