「一凛の鈴」より。
【巫女舞】
リンと、鈴の音がした。
巫女が振る、鈴の音。
リン、リン、リンと、
静寂を破り、
神社の境内にこだまする。
ピンと張りつめた空気。
結界に守られた神域。
神に仕える巫女の、
おごそかな舞い。
祭壇に向かい、
祈りを捧げる神官。
童子の吹く笛の音。
太鼓の音。
粛々と、とり行われる儀式。
霊座には、祀られし神の見えざる姿。
巫女は感じる。
心の目で見る。
物言わぬ神の姿を。
その表情を。
やがて、
にっこりと微笑む神の波動を感じ、
巫女の頬は紅潮する。
「いつもながらの見事な舞い、
感服つかまつった。」
そう言う神の言霊が
巫女の耳に届く。
他の者には聞こえない。
神官にすら。
巫女は、満足げに、舞を終える。
舞を終えると、神の気配も消える。
祭りの終わり。
神官による祝詞は続く。
それを聞く神は、もういない。
よっくる