『響け!ユーフォニアム3』(TVアニメ)で

北宇治高校吹奏楽部の新一年生として登場した、義井沙里ちゃん。

サリーという愛称。
神社の子。(モデルになった神社は宇治に実在)

この子のファンアートを描いてみた。


次の次の世代では部長になるんじゃないかと

勝手に予想。


黄前久美子の黄前相談所を引き継ぎ、
義井相談所を開設するんじゃないかと。

弱い子の苦しさに寄り添える、優しい子。
神社直伝の祈祷もやってほしい。

占いはNGだそうです。笑


・・・


占いはNGで🙅‍♀️


えっ、お祓いですか?

できますけど…

おじいちゃんに怒られるかな…

…内緒ですよ?


(サリー)


これは、京都アニメーションの人気アニメ

『響け❗️ユーフォニアム3』

を原作にしたファンアート(短編小説)です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                      (絵  ベッキー)


全国大会も終わり、部活を引退した高校三年生の面々は、進路が決まっていないものは受験生活に吹部で鍛えた集中力を発揮していた。
井上順菜もご多分にもれず、予備校に通う忙しい日々を過ごしていた。
テスト問題を解きながら、順菜は大学に入ったら、なにをしようかと夢想していた。
一生やり続けようと決めた音楽。
パーカッションで吹奏楽…
でも、それはもう、中学高校の六年間でやり尽くしたから、未練はない。
もともとはライブハウスで見たバンドの演奏のかっこよさに憧れてパーカッションを始めた。
であれば、いよいよバンド活動⁉️
順菜の夢は膨らむが、その前に目の前の問題をクリアしないと。
順菜は答案用紙に再び集中した。

順菜は、部活三昧で成績が伸び悩んでいたが、持ち前の集中力と頭のよさでなんとか府立大学に合格した。
制服を脱いで、カジュアルなスーツに身を包み、いざ、入学式へ。
これならリクルートにも使えますよと言われ、母親が購入したスーツは、順菜を初々しいOLのように見せたが、今から就職の話?と内心はげんなりしていた。
もちろん、表情に出したりはしないが。
楽しい大学生活がこれからスタートするのだから、そんな先の話はしばらくおいておこう。


なにごとも最初が肝心。
学業のかたわら、なにに時間を費やすのかはとても大事な選択だ。

やはり軽音部にでも入ろうかなと、クラブやサークル活動のチラシ配りをする先輩たちを眺めていると、その中に見知った顔を見つけた。

北宇治で副部長をやっていたOBの夏紀だった。

(以下 じ 順菜、な 夏紀、ゆ 優子)

じ あ、夏紀センパーイ!

ブンブン手を振る順菜。

な あれ、君は確かパーカスの…

じ 井上順菜です!覚えててくれて、うれし〜!


ぴょんぴょんはねて喜ぶ順菜。

な もしかして、この大学に入学したんだ?


じ はい、よろしくお願いします!


自然体で握手しようと、手を差し出す夏紀。
その手を両手で包み込む順菜。


(じ 夏紀先輩って、マジイケメーン❤️)


じ あ、でも、確か先輩って私立でしたよね!


な そうそう。今日はチラシ配りに遠征に来てるんだ。

順菜は、夏紀が小脇に抱えているチラシに気づいた

じ もしかして、サークルかなにかの募集ですか?

な いや、うちら、あ、私と優子なんだけど、バンド組んでてさ…

(元部長と副部長がバンドォーッ⁉️)

順菜の驚きは、声にならない声となり、夏紀に届いた。

プッと吹き出す夏紀。

な あ、知らないよねー。どマイナーなバンドなんだけど、演奏よりも2人のMCの方が面白いって、最近言われててさ。お笑いバンドじゃないっつーの。

  ライブの集客も自分の大学だけじゃ少ないからさ、こうして遠征してるってわけ。

じ わたし、わたし、お二人のライブ、聴きに行きたいですっ!

な お、いいノリだねえ。ではさっそく、チケット買ってくれる?

そう言って、チケットをトランプのカードのように取り出す夏紀。

じ 北宇治のOGも誘うんで、五枚、いや、十枚預からせて下さい!

な ハハハ、そんな、無理しなくていいよ。
  ま、減るもんじゃないからいいけどね。

そう言って、手持ちのチケットとチラシを順菜に託す夏紀だった。

しばらくチラシ配りを手伝って、お茶してから二人は別れた。


順菜はお茶してる合間に、ただちにパーカスのグループLINEにライブ情報を送り、親友の堺万紗子(まさこ)には直接LINEを送った。
まさこは順菜とは別の大学に通っているが、二つ返事で行くと即答してきた。
北宇治のパーカスは、パートリーダーの順菜がチームワークを大事にしていたこともあり、とても仲がよい。

パーカスのグループLINEも順菜とまさこが提案して作ったものだ。

北宇治を卒業するときに、グループLINEからも卒業するつもりが、後輩達から『残ってください!』と懇願されて、そのままにしている。
さすがに現役生は、お小遣いもそんなにないから、来ないだろうと思っていたが、夏紀を知ってる後輩たちの反応を見ると、みんな行きたがってるようだ。
ただ、吹部も新入生の勧誘に忙しい時期なので、何人来れるかは直前までわからないようだった。
高二の頃にアンコンのために結成したチーム高坂のグループLINEにも案内を送ってみたら、久美子から反応があり、低音のみんなの予定を聞いてみると言ってくれた。
みんな、卒業して離れ離れになっているので、こういう機会に会えるのは嬉しいようだった。

『奏ちゃん、夏紀先輩から直接言われてないから、行きませーん、だって。あの子らしいね。』
久美子からのLINEを見て、くっくっと笑う順菜。
そう言えば、低音パートも、仲よかったなあ。
順菜は吹部時代を懐かしく思い出すのだった。


夏紀と優子が出演する予定のライブハウスは、定員二十名くらいのこじんまりとした箱だった。

二人の通う私大のOBが道楽で始めたもので、学生バンドを優遇してくれるので、サークル活動の場として活用されていた。

プロではないから、客も界隈の学生がメインで、だいたい出演するバンドの友人繋がりとかだ。

夏紀と優子のなかよし川バンド(仮)は、コアなファンが数名ついていたが、そうした常連たちは二人の掛け合い漫才を楽しみにしていた。

二人の追っかけ的なファンもいたのだが、あまりしつこいとすぐに優子がキレて、退散させてしまうので、あまり定着しないのだが、二人はそれでいいと思っていた。

今回のライブには北宇治の後輩達がたくさん駆けつけることになり、せまいライブハウスはギュウギュウの超満員になった。

ギターを二人でかき鳴らしながら、夏紀がマイクをとる。

夏紀の声は不思議な声色をしていて、妙に耳に残る。

二人は奥華子のカバーや流行りの歌のカバーを演奏したが、どれも好評だった。


休憩時間に順菜は後輩たちに囲まれた。


「先輩はバンド、やらないんですか?」

そう言われて、ハッとする順菜。

なかよし川バンドにはドラマーがいないので、少し寂しい気がしていた。

ドラマーが加われば,演奏の幅も広がるだろう。

そう思うと、目につくのはドラムセットだ。

なんだか楽器が自分を呼んでる気がして、ドラムを叩きたい衝動が湧き上がってきた。

受験勉強からこっち、楽器の演奏からは遠ざかっており、自宅にあるピアノを触る程度だった。


でも、今日は先輩たちのステージだもの、我慢我慢。

そう自制する順菜だった。


後半になり、二人のトークでライブは進んでいった。


ゆ 今日は、私たちが卒業した高校の吹部仲間がたくさん来てくれました!拍手ーっ‼️

な 見渡す限り、吹部で見かけた顔ばっかりだね!みんな、来てくれてありがとう!

ゆ なんか、低音とパーカスの参加率、高いんですけどー?

な それは、われらが広報宣伝大使、井上順菜のおかげですっ!みんな、順菜に大きな拍手を!


まわりからやんやの喝采を受け、順菜は照れながら立ち上がり、お辞儀をした。

パーカスの後輩男子部員から、口笛でエールが送られる。


ゆ せっかくだから、井上にもなにかやってもらおっか?

な えー💦 いきなりはちょっとないんじゃない?


優子の無茶振りをいなそうとする夏紀だったが、順菜はよどみない声で、


じ はいっ!やります!やらせてくださいっ‼️


と即答し、これにはみんな驚いた。


そうだ。井上順菜とは、こういう子だった。

物怖じせず、本番に滅法強い。

三年間、北宇治のコンクールメンバーであり続けたのは、伊達じゃない。

何より、自分の心が、ハートがやりたがっている。


実は、ライブまで一週間とせまった頃、順菜は万紗子とふたりで会っていた。

大学での近況報告をしたあと、なかよし川ライブの話題になった。


ま 順菜はさ、バンド活動はやらないの?

じ うん、考えてはいるよ。でも、どんなメンバーでやったらいいのかなって、悩んでる。


と、正直に打ちあけた。


ま 先輩たちといっしょにやればいいんじゃないの? てっきり、その流れかと思ってた。


そう言う万紗子に、苦笑する順菜、


じ それは、さすがにわたしからは言えないかな。


ま でも、せっかくライブあるんだしさ、吹部のみんなもたくさん来るんだったら、順菜もなにかやりなよ。絶対盛り上がるって!


じ それはわかるけどね。でも、わたしはチケット販売を手伝っただけやし。いよっ、宣伝部長!とか言われてさ。


ま 先輩たち、見る目ないなあー。ここに、こんな優秀なドラマーがいるのに。


万紗子は残念そうにストローをくわえた。

こうした仕草もいちいちかわいい親友だ。


順菜は話題を変えようと、


じ そう言えば、夏休みにゲリラライブ、階段のところでやったじゃん。あれ、盛り上がったよねー。

ま あ、あれねー。うんうん、低音パートのみんなが盛り上げてくれたよね。

じ 調子に乗って三曲も歌ったよね。内心、いつ先生が飛んでくるかドキドキやった。

ま まあ、夏休みだったしね。吹部の子しか校内におらんかったし。

じ 文化祭でステージに出たらって言われて、あせったよね。

ま 文化祭は吹部の演奏があるから、余裕なかったもんね。でも、やってみたい気はちょっとあったかも。

じ わたしら、アイドルになりそこねたよね。

ま うんうん、言える言える!


そうやって、バカな話をしてはしゃいでると、高校時代の部活のひとときを思い出す。

いろんなことがあったけど、楽しかったな。

順菜は、楽しいことが好きだ。

はしもっちゃんの

『音を楽しむと書いて、音楽🎵』

は、いまも座右の銘だ。

是非、大学生活においても、音楽の楽しさを追求したいと思っている。

ただ、まだその目標が定まらないだけで。


ドラマの前に座り、そんなことを連想していると、夏紀が、


な それじゃ、あれ、やります。

  アジカンの『転がる岩、君に朝が降る』。


その後のライブがさらに盛り上がったのは、言うまでもない。



初出 2024.7.31