その年の社員旅行はハワイだった。
社員旅行&報奨旅行の行き先は、
ゴルフ・カジノ・女
この3つが充実していることが大前提だ。
1つでも欠落している場所には行かない。
もちろん、3拍子揃った都市は無数にあるわけではない。
報奨旅行は社員旅行とは別で、
報奨旅行は 3回/年。
社員旅行は 1回/年。
頑張った人間ほど・・・、贅沢であることは承知だが、飽きる。
社長の親心も知らずに、 『あ、今回は行きません。』
昔は平気で断っていた。
でも、今回は最後の旅行。
辞める人間なので、と旅行参加の辞退を申し出たが、
『来いよ、最後だろ。』
と社長。
部門のメンバーも誘ってくれたため、喜んで参加。
どうしてこうなったのかは忘れたが・・・、
ハワイの夜の最終日。
私の部屋に皆が集まり、リビングで皆と一緒に飲んでいた。
社長の呼び出しを予感し、23:00頃にはお開きに。
夜の街に繰り出す準備を・・・と思ったら、ソファにひとり、美〇ちゃんがいた。
心の中で叫んだ
『社長の電話、ブッチしよ~っと♪』
美〇『どうして会社辞めちゃうんですか?』
正直に答えた。
実は入社したときから転職願望が強かったこと。
5年以上在籍したのは、高待遇につられた結果であること。
そうこうしているうちに、非常に居心地が良くなったこと。
このままでは他社で働けない人間になってしまう、と危機感を抱いたこと。
そして、ルーキーの大火傷が退社のきっかけになったこと。
ここまで話したとき、彼女の目から大粒の涙がこぼれ落ちていた。
気が付いたら、彼女の頭が・・・自分の胸にうずくまっていた。
彼女とは手すら握ったことはない。
私は経験ないです(処女です)、と小声で言い切る女性だ。
軽くだが、彼女を抱きとめた。
あくまで、男女としてではなく、仲間として、であった。
さっきまでは熱い血?何か煮えたぎったものが体内を駆け巡っていた自覚があったのに・・・。
不思議と異性としての彼女を意識することはなかった。
結婚したから、とか、そういう理由ではなかった。
もちろん、何もなかった。
普段はメス犬にでも欲情するのに・・・。
(つづく)