86歳女性。高脂血症。膝と腰に痛みを抱え、杖とシルバーカーを頼りに歩く。2019年2月、ガスの元栓の開け方が分からず、病院で検査を受け、軽い認知症と診断される。2020年1月7日初施術。そのときの血圧が190あったため、とりあえず、血圧を下げること、腰と膝の痛みを緩和することを目標に施術する。上肢の左陽池、曲池、手三里、合谷、下肢の血海、梁丘、両膝眼、足三里、解谿、腰部の次髎、大腸愈、腎兪、脾兪、肝兪、背部の大椎、身柱に半米粒大の艾で3壮ずつ。同様の施術を週2回の頻度で続けたところ、血圧が徐々に下がり、1月16日に179、1月23日に150となった。

 

2月11日、施術の前後で、血圧がどう変化するかを調べてみた。午前の最高血圧/最低血圧は172/74であった。午後の施術直前には156/65となっていた。そこで、30分のハリ灸を施し、直後に血圧を測ったところ、147/60となっていた。血圧は施術後しばらくしてからでないと下がらず、施術直後は上昇するかもしれないと、不安であったが、この結果を見ると即効性もあるようだ。ところが、2月13日、どうように施術前後に血圧を測ったところ、148/55が153/61に上がっていた。これは、どう解釈したらいいのだろうか。なかなか難しい。

 

この女性の言葉に、ちょっとしたなまりがあった。私が、「ひょっとして九州の生まれじゃないですか」と聞くと、「そうです。わかりますか。私は長崎の生まれで、30歳のころ愛知にやってきました」とのお答え。おや、と思った。彼女の誕生年を確認すると、昭和10年である。ってことは、終戦の年に長崎にいたことになる。「長崎市内の出身ですか」と聞くと、「いいえ、長崎湾の直ぐ南の小さな島で、今は橋ができて、陸続きになっています。昔は石炭が採れていました」との答え。すかさず聞いた。「それでは、原爆が落ちたとき、どうでした。影響がありましたか」。すると、淡々とした口調で、以下のような話をしてくれた。

 

「ピッカと光ったのは覚えています。島はそれほどの被害はありませんでした。ただ私のすぐ上の兄が長崎市内の中学校に通っていたので、両親が2、3日してから探しに行きました。兄は焼けただれて死んでいました。一番上の兄の方は海軍に入隊していて無事でした。」

 

この女性、旧姓「犬塚」で、長崎に多い名前だという。唐から帰ってきた空海が連れてきた犬がこの島で亡くなり、そのお墓を御先祖様たちが建てた。それが犬塚の由来だそうだ。島の長い石段を上ったところにその塚があり、毎年4月にお祭りがあるという。