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生態系の解明 ゼロから挑む 西之島、噴火でリセット 唯一の孤島

オピニオン6 時間

噴気が上がる西之島=2022年7月撮影(環境省提供)

噴気が上がる西之島=2022年7月撮影(環境省提供)© 東京新聞 提供

 地殻変動で新しい陸地が誕生した後、生物はどこから来て、生態系はどのように形成されるのか。動植物が定着する過程を実際に観察することが可能で、世界唯一とも言われる場所が東京都内にある。今年で大規模噴火から10年になる小笠原諸島の西之島で、息の長い調査が続いている。

 火山灰に覆われた島からは、まだ噴気が上がっていた。2022年7月、東京都心から南へ約千キロの小笠原諸島の西之島で行われた環境省による調査。小型船で近づいた生物学者らが、ドローンで撮影したり土壌を採取するなどして、生物の存在を調べた。

小型の船で島に近づく研究者ら=2022年7月撮影(環境省提供)

小型の船で島に近づく研究者ら=2022年7月撮影(環境省提供)© 東京新聞 提供

アオツラカツオドリ2羽=2022年7月撮影(環境省提供)

アオツラカツオドリ2羽=2022年7月撮影(環境省提供)© 東京新聞 提供

 「カツオドリやオオアジサシなど5種類の海鳥の繁殖を確認できた。トビカツオブシムシなどの昆虫も見つかっている」。鳥類学者で森林総合研究所(茨城県つくば市)の川上和人主任研究員(50)=写真=は振り返る。

生態系の解明 ゼロから挑む 西之島、噴火でリセット 唯一の孤島

生態系の解明 ゼロから挑む 西之島、噴火でリセット 唯一の孤島© 東京新聞 提供

 西之島は13年、約40年ぶりに海底火山が噴火。もともとあった旧島を溶岩がのみ込み、新しい島になった。生態系はリセットされた状態に。19年から翌年にかけての噴火では、わずかに残っていた旧島の部分も火山灰で覆われた。

 川上さんによると、インドネシアとアイスランドにも火山活動による新しい島はある。しかし、ともに隣の島から20キロ足らずの距離で、生態系の形成において影響を受けやすい。一方、西之島は半径130キロに他の島がない。「海の真ん中の孤立した島で生態系がどう形成されるのか。今までは推測してきたが、人類史上初めて過程を観察できる」と価値を説明する。

 環境省は16年から22年にかけて数回にわたり、鳥や昆虫、火山などの研究者による調査をした。上陸する時は外来種の昆虫や植物を持ち込まないように、新品の服や靴、バッグを着用。調査道具はアルコールなどで洗浄した。さらに、小型船で近づいた上で、全身を海水で洗い流すため、泳いで渡った。

クロアジサシとひな=2022年7月、西之島で(川上和人さん提供)

クロアジサシとひな=2022年7月、西之島で(川上和人さん提供)© 東京新聞 提供

持ち帰った海鳥の死骸から見つかったトビカツオブシムシ=自然環境研究センターの森英章さん提供

持ち帰った海鳥の死骸から見つかったトビカツオブシムシ=自然環境研究センターの森英章さん提供© 東京新聞 提供

 川上さんは「教科書を書き換えるくらいの発見があった」と語る。

 一般的に生物が島に来る方法は(1)鳥に運ばれる(2)流木などとともに漂着(3)風で運ばれる-の三つのパターン。最初に植物が生え、次に植物を食べる昆虫が生息し、虫を食物にする鳥が定着すると考えられていた。ところが、16年の上陸調査では、食物になる植物がない溶岩の台地で、植物を食べる昆虫ではなく、鳥の死骸を食べるハサミムシが見つかった。昆虫が死骸を分解して土に養分を供給し、将来的には植物の定着も見込まれる。

生態系の解明 ゼロから挑む 西之島、噴火でリセット 唯一の孤島

生態系の解明 ゼロから挑む 西之島、噴火でリセット 唯一の孤島© 東京新聞 提供

 つまり、従来の通説とは逆に、最初に鳥、続いて昆虫、植物という順番が考えられる。魚を食べた海鳥の排せつ物や死骸によって海の栄養分が陸に持ち込まれ、生態系が始まる可能性が出てきた。

 島の生態系について川上さんは「移入と絶滅の繰り返し」と表現する。多様な生物が移入し、絶滅する中で、生き残った生物によって生態系が形成される。今後どんな生物が島に来て、定着するのか死んでいくのか、まだ分からない。

 「西之島のモニタリングは人類として続けなければいけない。私たちは今、変化の大きな最初の10年を見ているが、100年、200年どころか千年続く事業と思っている」と壮大な時間軸で先を見据えている。

 文と写真・宮本隆康

 

生態系の大変化もさりながら、日本のEEZの拡大で戦わずして天然資源が手に入る…喜ばしい事です。