航空自衛隊三沢基地(青森県)の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが太平洋に墜落した事故で、海上自衛隊は海底にソナーを設置するなど任務上、秘匿性が高いことで知られる敷設艦「むろと」(全長131メートル、4950トン)を現場海域に投入した。
深海の信号探知、フライトレコーダーか=岩国の戦闘機、給油機墜落-横須賀・米海軍
米軍がチャーターした深海活動支援船「ファン・ゴッホ」(111メートル、9200トン)も24日に沖縄県から出港し、現場海域に向かった。気象条件にもよるが、早ければ週内に到着する。日米防衛当局は特殊な深海作業能力を備える艦船を使い、連携して墜落した機体の発見に総力を挙げる。
F35は9日午後7時27分ごろ、青森県沖の太平洋上でレーダーから消失。搭乗していた細見彰里(ほそみ・あきのり)3等空佐(41)が行方不明になり、懸命の捜索が続いている。当時細見3佐は「訓練中止」を一緒に飛行していた僚機に通告してから約1分後にレーダーから機影が消えた。中止の通信直前まで、現場空域の状況や訓練内容などについて、通常の交信をしていたことが分かっている。
◇海底広域研究船「かいめい」も現場に
政府関係者によると、文部科学省が所管する海洋研究開発機構の海底広域研究船「かいめい」(全長100メートル、5747トン)も24日午前9時に横須賀(神奈川県)を出港し、25日に現場海域に到着したもようだ。
◇最先端の信号探知能力
「むろと」の普段の主な任務は潜水艦の音を探知する固定式ソナーの海底への設置。潜水艦の運用と密接に関連することから秘匿性が高く、「表舞台」にはめったに出てこない。今回の捜索では、墜落機のフライトデータレコーダー(FDR)に取り付けられているビーコンからの救難信号の探知に当たるとみられる。
一方、米海軍によると、「ファン・ゴッホ」には海軍サルベージの専門家チームが乗船。6000メートルの深海でも音響を探知できる「TPL25」と呼ばれる最先端のえい航式信号発見システムも搭載されている。TPL25は昨年12月に高知県沖で起きた米軍給油機と戦闘機の墜落事故で、水深3000メートルからのFDRとみられる信号をキャッチした実績もある。ビーコンの電池は1カ月程度とみられ、時間との闘いにもなる。
◇海底の状況把握も
「かいめい」は音波を発信して海底からの反射音を受信し、跳ね返りの強弱、角度などを分析して海底に機体のような人工物が沈んでいないか捜索する。ソナーや、水深3000メートルまで対応可能な無人探査機(ROV)も備えている。
◇わずかな破片でも機密
現場海域は公海で、他国が回収を試みても日本政府は実力を行使して阻止することはできない。日米関係者は「F35の小さな破片1枚でも第三国の手に渡れば、機体の電波吸収素材が詳細に解析される恐れがある」と述べ、中国やロシアの動きを警戒している。
機体が見つかった場合でも、機密性の高い構造があらわになっている可能性もあり、政府関係者は「引き揚げ作業でも厳格な保全措置が講じられる」と話している。(時事通信社編集委員 不動尚史)。
自衛隊の世界最先端ステルス機F35-Aが墜落した事故で、
日米両軍が墜落機発見に威信をかけて取り組んでいる。
中露の動きは不明だが、海面下では熱い探査合戦が・・・。