「飲む打つ買うは男の甲斐性」だ・・・と言う時代に育った。
昔を懐かしむ事こそ老いである。
我が人生に悔いは無いなんて大見得は切れないが、
我を通し損に生きてきたものである。
肉体の衰えは如何ともし難いが、精神だけは意気軒昂である。
人それぞれに、五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)に違いはあるが。
振り返ると、目力は弱かったが、聴覚は並外れていた。
人に聞き取れないはずの超音波が聞き取れた。
屋根裏で鳴き交わすコウモリの鳴き声が聞こえたり、
締め切った部屋の外から音を消したテレビの高周波音が聞こえた。
水族館でイルカショーを見た時もイルカが騒ぎ、狂ったように
水槽内を泳ぎ回って勝手に飛び跳ねていた。
係員がどうしたのとイルカを宥めていた。
超音波の事を人から疑われ、実験して見せてビックリさせた。
部屋の中で蚊が飛び交う羽音も聞き分けられたが・・・
老いは全てを消し去り普通の人になってしまった。
妻は最近返事が遅いとまるで難聴扱いにするが、
1km先から聞こえてくる救急車の音を部屋の中でも平気で聞こえる。
嗅覚も鈍感になったようで、娘の嗅覚にビックリさせられる。
何って、この程度は判るまいと放屁したら、後から入ってきた娘が、
屁の臭いがする・・・即・・窓を開けてと指示が飛ぶ。
普通の放屁に過ぎない行為が肩身の狭い事この上ない。
急激で激しい運動や持続力を求める運動は弱かったが、
瞬発力は人並み優れていた・・・
真夜中に部屋に飛び交うコウモリを蝿叩きで打ち落とせた。
仕事場でグルグル飛び回る小さな蝿を簡単に打ち落として見せた。
しかし最早その瞬発力にも陰りが見える。
新聞の活字が読み難くなり、細かい字でビッシリ書き込まれたブログ文
も読みこなすのが難儀である。
同年輩の竹脇無我氏も冥土へ旅たったと先ほどニュースで聞いた。
空蝉として生かされているこの命・・・
うつせみの世は常なしと、知るものを、秋風寒(さむ)み、偲(おも)ひつるかも
大伴家持
古希近くなり知りえた事も多くなった。
特にマスゴミ各社が数多くの情報フイルターを通し、
国民が一番知りたい身近な情報に蓋をし、
経営方針だと、似非情報を国内でばら撒いている事を知った。
老いたりと言えども・・・・・
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「やんぬるかな」と諦めるわけには行かぬ。