我輩は、何の変哲もない眉毛である。
世間では、「ジジまゆ」と呼ばれている。
ジジまゆとは・・・眉毛の寿命が3~4週間なのに、
1年以上も妙に長く伸びていく現象なのである~~~~~
通常、眉毛の成長期は100~150日じゃが、
我輩は自分の死期を忘れて、伸び続けある日突然ポロリと抜け落ちる。

仲間の一つが、先ほど抜け落ちた写真の眉毛である。
宿六の「よかもん」旦那の寿命にあわせ生き続ける心算である。
我輩が伸び始めたのは40代頃から、母方の祖父の遺伝である。
口や鼻や目たちは【顔面問答】を仕掛けてきて我輩を馬鹿にするが、
「余暇門:旦那」は我輩をこよなく愛してくれる。
朝に夕に、眉毛である我輩をしごく癖がある。
別に虐めではない、根元から毛先に向けて指でしごくのである。
今日も今日とて、愛のしごきに仲間の一人が「よかもん」旦那の指に付いていった。
さよならも言わず、毛根を残し役目を終えた。
写真に撮ってその冥福を祈るのだ。

我輩は威厳を保つのに役立ってはいるが、仲間に白毛もチラホラ見え出してきた。
我輩の周りに刻み込まれた皺の数と同じく我輩も歳を重ねたわい。
引退の声が掛からぬうちに、眉毛の一人事を書き綴った。
口は不健康とも知らず美食に誑かされるし、
鼻は、女性や食べ物、花などを含め、旨そうな匂いに弱い。
目だってそうだ、道行く風景や女性についてゆきたがる。
我輩は別だ、何も望まず、ただ、しごかされる事のみ喜びとしてここに鎮座している。
雨にも負けず風にも負けず、夏の暑さにも冬の寒さにも負けず、黙ってここに居る。
伸びるが早いか抜けるが早いか、競争を楽しんでいる。
「余暇門」旦那はこの記事を書きながら又しごく。
今日はもう抜けてゆく仲間がいない。