俺は誰だ、・・何でここにいる・・、アレッ・・どうしたのだろう?
昔の記憶はあるが、今取り決めた事を忘れている。
これが始まりです、アルツハイマー病は原因も治療法も直す薬もありません。
「渡辺謙」主演の映画「明日の記憶」は、共演「樋口可南子」と共に名演技を見せてくれた。
今日、妻と映画館に行き鑑賞してきたが、これは身近に起こった現実の再来として受け止めた。
子供も兄弟もいない妻の叔父夫婦は、
我々夫婦を自分たちの子供のように、子供を孫のように可愛がってくれた。
叔父は病院の薬局長を永年勤め、退職後言動におかしな事がハッキリと現れてきた。
叔母はひた隠しても、長年の付き合いから、行動の異常は判った。
外食のレストランで大きな姿見の鏡の中に入る仕草を見せたり、
叔母との散歩で変な奴が付いてくると我が家に駆け込んできたりした。
義父の葬式で私の方から親戚一同に前もって異常行動を知らせていたので奇異の目で見られても、
叔父夫婦に恥をかかせる事にはならなかった、・・・と自負してはいるが。
叔母はその場でもアルツハイマー病の事はひた隠しにしていた。
その後伯母が白状し対策を相談したが、今と違い「認知障害」事態が世間に認知されていなかった。
アルツハイマー病の怖い所は、行動の記憶がすっぽり抜け落ちる事で、若年でも起こりうる。
一度罹患すれば後戻り出来ない病気で、次第に忘れ去る事が大きくなり、妻も子も夫も忘れ、 赤ちゃん返りをして亡くなる。
映画では、会議の進行について行けなくなり、渋谷から自社までの道を忘れ、余儀なく退職。
働く立場が逆になり、一日自宅で鬱々とした日を過ごす内、昔の記憶に導かれて、
若い頃妻と出会った山奥の陶芸家の釜跡を訪ねて、
夢か現か窯元の老先生と、持ち込んだ手作りの素焼きを焼き直し、
朝の光の中で探しに来た妻と再会するがその時には妻を忘れていた。
これは現実に起きている事です。
叔父も奥さんを忘れたし、叔母は友達を忘れたし私も忘れられた。
かろうじて妻と娘は微かに記憶に残されている。
「介護度5」とはこんな状態です。
人によっても違うのだろうが、今の顔は仏様に返っている。


窓の外からは祭りに向けて明日を担う幼稚園児のにぎやかな声が、
よさこい踊りの練習で賑やかに騒がしい。
今元気に働けても、何時降りかかるか判らぬ災難と病魔、「情けは人のためならず」を再認識する時です。