まだ自然が豊かであった昭和29年春、小石原川の下流の甘木川には清流が残っていた
湧き水も多く湧き水を水源とする細流が甘木川に沿って流れていた、良く沢ガニや小魚、巻き貝を
手づかみし食卓を賑やかにしたものである。
長い竹竿を担いで細流の狭い土手を鼻歌まじりの自転車で走っていたとき、前方一面に長いヒモが
捨ててある(そのように想った)、誰が捨てたんだろうと自転車を勢いよく走らせてヒモに乗り上げた
途端、 全てが「へび」で土手一面にうじやうじやと絡み合っている、両足をサドルから放しへびの群れ
に突っ込み転倒、おそらく全身あわ立ち総毛だっていたんだろうが「ギャツ」と一声5メートル幅ぐらい
の「へび」の絨毯を踏みつけて後ろもみずに家まで逃げ帰った、
里山で育った自分にとっては「へび」や「いもり」「とかげ」や「ガマ」など怖い物はなく
素手で何時でも掴んで遊んでいたが,あのときだけはダメだった
次の日自転車も釣り竿もそのままで残っていた、もちろん「へび」は一匹もいなかった
忘れもしない中学1年の早春の思い出である。