猿橋勝子(水原希子)
伊与原新『翠雨の人(2025)新潮社』は、地球科学の先駆けで後に「微量分析の達人」として知られる猿橋勝子の評伝小説。戦前、物理学から気象学に転じ、戦後はオゾン層における二酸化炭素の解析、またビキニ環礁における原爆実験を端緒に、米・英・ソ連による原水爆実験競争から放射能による環境汚染をいち早く指摘、世界にその実情を知らしめた。
理科系のミステリなどで知られる伊与原新の評伝小説とは? と気になっていたところで。図書館本の予約人数が多くようやく順番が。伊与原新が猿橋勝子の評伝を書くに至った理由については「〝猿橋賞〟の知名度に比して、勝子自身の成し遂げたことが、なぜこうも世間に知られていないのか。いつかこの手で書きたかった」そうでネットのインタビュー記事に詳しい。
エノコログサの群落
構成は、医師を目指し物理に転じるまでの第一部から、戦時中の学生&研究者を経て、世界的な知名度をあげつつ、第四部では戦後原水爆実験による日米研究者による微量分析の実験対決がスリリングに描かれる。戦時中の研究者の立場も含めて後半部の充実に目をみはる。
巻末に執筆にあたっての、膨大な量の「主要参考文献」リストが掲載されていて驚かされる。
イラストについて。NHK-BSで猿橋勝子のドキュメンタリードラマが制作(2021)されていて、勝子役は水原希子が演じた。残念ながらBS契約はしていないので未見です。

