里見勝蔵。画魂 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

佐伯祐三

 

佐伯祐三ともどもフォーヴィスムの洗礼を受けた洋画家・里見勝蔵の戦前戦後の随筆を集めた『画魂(1948)大丸出版社』。書題に「画魂」というのも凄いが内容も気合が入っている。一部ダイジェストしてみよう。

 

僕はヴァン・ゴーグ(ゴッホ)を最も愛している。モディリアニはロマンチックで可憐な男である。マチス、春信、清長は初中期の非自然主義の作品のみいいようだ。セザンヌに感心する。真に唾棄すべき帝展や、アカデミックな絵から学ぶことはある。こんなヤクザな絵を描いてはいけないと。

 

新聞や雑誌は読まない。古典から常に新しいことを学ぶ。ほら、この日本画家の大家を集めた写真帖を見たまえ。お化けと、馬鹿と、気狂い、道化とミイラの集まりで、よくもこんなものを集めたものだ。無明氏による支那陶器や良寛にしても虚飾を取り去った最小限の必要なものだけの美。それで沢山だ。術の究極だ。

                  思うまま(昭和17年2月)

 

里見勝蔵:画魂(1948)大丸出版社

 

僕は生まれて以来、四十幾年か新聞を読まない。雑誌を取らない。ラディオを引かない。シネマを見ない。新聞屋が購読せよと勧誘に来ると僕は答える。—大臣が代わっても、女優がカケオチしても、殺人があっても、僕には一向関わりがないと。

                  画家の生活(昭和11年9月)

 

こんな感じで。それでいて結構家庭人みたいなんだけど。すっかり気に入ってしまい『赤と緑(1942)昭森社』の注文をだした。タイトルから画論みたいな気がするのだが、判らない。新聞・テレビよりは面白そうだ。

 

残 照

 

里見勝蔵の写真を画像検索しても(若いころの一点を除いて)ほとんど見つからない。しかたなく盟友の佐伯祐三を描いた。若いころ私淑した佐伯は30歳で早逝した。懐かしく描く。里見は86歳で亡くなっている。