M.W.クレイヴン。恐怖を失った男 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

エミリー・ブラント

 

M.W.クレイヴン『恐怖を失った男(2024)ハヤカワ文庫』は、連邦保安官局特殊作戦軍の元指揮官ベン・ケーニグを主人公にしたシリーズ初巻。そのケーニグはウルバッハ-ビーテ病という稀な劣性遺伝症によって右脳の扁桃体が石灰化し「恐怖を感じなく」なってしまった。感覚における恐怖感の欠如だね。

 

怖いものなしの人間に作戦のリスクを正確に評価できるわけがないということで、特殊作戦の指揮官を任せるわけにはいかない。しかも、ロシア・マフィアNo.2のボスの息子を射殺したために、500万ドルの賞金首になっちゃって、やむなく連邦保安官局を辞め地下に潜伏して6年… 

 

そんな逃亡中のケーニグに、突然「元上司の娘マーサが誘拐された」と呼び出され、かつての部下で「互いに強く嫌悪しあっている」美女ジェン・ドレイパーと組まざるをえなくなる。

 

M.W.クレイヴン:恐怖を失った男(2024)ハヤカワ文庫

 

簡単にいうと、クリストファー・マッカリー監督、トムクルーズ主演の『ジャック・リーチャー(2012)』みたいなノンストッパブル・ノベルといったところで、となれば。とにかく読み始めたらラストまで「一気読みさせてよね」といった作品。ともあれ、700ページの大冊を弛みなく読ませくれるのですから、かなり成功していると思いますね。

 

作者は相当な読書家で、さまざまな分野からの引用を自然に盛り込んでいて、なかなかに細部も凝っています。まぁ、全体にコミカルなシーンもありエンタメ路線は踏み外さない。続刊も発刊予定ということで愉しみです。