平安時代の女性
来年の大河ドラマ『光る君へ』のスチールがネット上に流れ始めている。平安時代の紫式部をヒロインに描かれるようで、戦闘のない(起伏のない)雅びの世界がいかに展開するのかね。楽しみなようでもあり、あるいはドラマ『大奥』のようになるのかな? もっとも『大奥』は視聴していないのですが…
平安時代はどんな暮らしだったのだろうかと、以前から気になっていた。山本淳子「紫式部ひとり語り(2020)角川ソフィア文庫」によると、紫式部が生きた平安の時代は絶えず疫病が流行して、医師はいたもののワクチンや抗ウィルス薬があるわけではなく、罹患したら祈祷頼み。
特に猖獗を極めたものは〝風疹〟で、多くの人が亡くなり生き残った人たちも痘痕になり、特に若い女性たちを嘆かせた。若く美しい女性は宮廷にあがるなどして、高位の相手を獲得することが成り上がる道でもあったから。
安田政彦『平安京のニオイ(2007)吉川弘文館』によると、まず平安京に関しては現在のようなトイレはなかった。几帳などで仕切って用を足しては、下女(樋洗:ひすまし)に始末させていた。大きな屋敷では泉水で排泄物を通りの側溝に押し流すような仕組みで、よく勢い余って路上に飛散した。
しかも当時は鳥葬が普通だったため、路上脇には屍体が放置され都は死臭と糞尿の匂いに包まれていた。異常に発展した感のある「香の文化」は、そうした負の側面を背負ってのものだろう。とはいえ、瀧井敬子『漱石が聴いたベートヴェン(2004)中公新書』ではないが、音や匂いの記録は難しい。