H.ジャクソン。卒業生には向かない真実 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

エヴァー・アンダーソン

 

ホリー・ジャクソン『卒業生には向かない真実(2021)創元推理文庫』これは、好奇心豊かで行動的な女子高校生を主人公にしたピッパ・フィッツ=アモービ三部作の完結編。初巻ではYAミステリと紹介したが、最終巻ではずいぶんとダーク(でスリラー)な世界に嵌り込んでしまった。

 

溌剌と明るく正義感が強いピッパをして、第2巻を経て「正義という言葉こそ、自分にとって監獄であり、檻なのだ」といわしめる。第3巻では溌剌とした彼女が苦渋に満ちた日常を持て余しかねている。作者は三部作を通してひとつの作品を構築していて、これから読まれる方は初巻から読み進めてほしい。

 

H.ジャクソン:卒業生には向かない真実(2021)創元推理文庫

 

最終巻は特にそうなのだが、ミステリというよりもスリラーな感じで、ピッパの個性的でいきいきとしたモノローグと、時に瞬間湯沸かし器的怒りに喰いつくされる燃焼度が魅力的。

 

さて、作者のホリー・ジャクソンは1992年生まれということなので、このシリーズは20代に書きあげたことになる。最初はライトノベルのノリで読み始めたのだが、どうしてどうして。最近の創元推理文庫の海外ミステリは高品質。本シリーズはちょっと時間を置いて再読してみたい。

 

イラストはピッパ役にキャスティングしたミラ・ジョコヴィッチの娘(将来を嘱望されている)エヴァー・アンダーソンを。2007年生まれ。初巻から映画化するにぴったりだろう。