小金井良精。人類学の黎明期に | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

木暮実千代

 

少し前の毎日新聞の一面に盗掘されたと思われる、海外の先住民の頭骨が国内の大学で見つかり、それは人類学の基礎が築かれた明治期、当時の東京帝国大医科大(現・東京大医学部)小金井良精(1859~1944年)ら人類学者が、国内外の多くの遺骨を集めて研究したことに起因するなどとある。

 

小金井良精の日記から、当時は軍人や外交官、医師、考古学の愛好家などさまざまな人脈を駆使して遺骨を集めたようすがうかがえ、なかには先住民に対する侮蔑的な発言も記載されているとして、その記事は小金井氏らに対して現代の人道的な目線で書かれたやや厳しめなスクープになっている。

 

横光利一の初期長編『上海(1928)』のなかに、上海で安く買い集めた主に下層流の遺骨を骨格標本にして、本国に輸出し成功した日本人商人が描かれている。戦前の社会状況を現在の目線でで批判しても仕方がなく、問題があるとしたらそうした資料の活かし方といった未来への視点だろう。

 

小金井良精は森鴎外の妹婿、星新一の祖父にあたり、われらが地元出身ということもあり、時代背景から推して(わざわざ新聞のトップ記事にするほどのことなのかとも思われ)ささやかな弁護を試みた。イラストは意味もなく横光利一原作の映画『日輪』に出演した木暮実千代を描いた。