岩下志麻。はなれ瞽女おりん | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

はなれ瞽女おりん:岩下志麻

 

前々から観たかった篠田正浩監督、岩下志麻主演『はなれ瞽女おりん(1977)表現社』DVDを、ようやく。わが新潟県糸魚川から石川県能登、長野善光寺から福井県若狭湾へと、日本海岸や山間へと場面を移しながら、生まれつき盲目の少女りんが瞽女となるものの、男と通じてはならぬという掟を破ったことから破門、

 

「はなれ瞽女」として一人世渡りをする一生を描く。今になれば1970年代はここまで暗い(エンディングの)映画を造り得たのかと驚かされるが、おりん役岩下志麻は(瞽女としての一生の)その聖性と卑属性を見事に体現している。もう一人、少女りんを預かり瞽女の技能を仕込む師であり養母となったテルヨ役の

 

奈良岡朋子の抑制が効いたたたずまいがなんとも美しい。加えて現代では再現できないような、わが国の(辻売り、仁輪加、行商といった)かつての風俗が映像として散りばめられている。制作の美術スタッフに粟津潔の名が。音楽担当の武満徹は映像を引き締めていて、さすが。すばらしい。

 

侘 助

 

昭和の終盤でしたろうか。あちこちのメディアで瞽女さんを取りあげるようになり瞽女ブームの頃がありました。ある日、財布をパンパンに膨らませた瞽女さんが、田舎で美容室を営んでいた叔母に「金ならいくらでもあるから」とセットにやってきたそうですが、髪は洗っても洗っても黒い汁がでたと漏らしていました。

 

俄か人気で持ちつけぬあぶく銭を得た様子の瞽女さんには、美容室での一世一代の奮発だったのかもしれませんが、叔母はなんともいえない気持ちになりお代はいただかなかったそうです。