竹久夢二のモデル お葉
先日頂戴した竹久夢二の限定本画集『行人の画帖(1970)龍星閣』を眺めていたら、夢二装釘の長田幹彦『西鶴情話』を架蔵していたはずと、あちこち掘り返してようやく見つけた。長田幹彦は(確か)同郷の先輩で、夢二による木版装釘本がかなり出版されている。もちろん人気古書の部類でなかなか手に入らない。
箱欠本なので自作のカバーを(右側)
長田幹彦:西鶴情話(1917)新潮社
夢二のモデル(恋人)といえば、永遠の恋人といわれた彦乃とお葉が有名で、ロマンチックに語られることが多いが金森敦子『お葉というモデルがいた(1996)晶文社』ほかを読む限りでは、夢二は案外に薄情で、彦乃は病を得るとお葉は飽きが来たのか最後は冷たくあしらっている。
大正時代は若い男女にとって「恋の実験場」みたいなところがあったから、いちがいに夢二を責めるわけにはいかないが、女性に人気の流行作家でもあったから手折った花は多かっただろう。今となっては、その夢二の作品に描き留められた折々の恋人に思いいたすばかりである。



