田村正和。時代劇の役者として | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

田村正和さんが亡くなられた。代表作としてまずは古畑任三郎役が引き合いにだされるのだろうが、私にとっては時代劇俳優としてのみ記憶されている。最初に観た『鳴門秘帖(1977)NHK』の印象が一番強く、テレビ版の『眠狂四郎』は原作者である柴田錬三郎は田村版を一番気に入っていた。

 

眠狂四郎:鳴門秘帖の田村正和(グラフNHK)

 

時代劇映画は1960年代からリアリズムを追求するようになってきて、田村正和のように存在自体がファンタジーに誘うようなところがある〝役者〟の出番が減ってしまったが、テレビには収まりが良かった。『眠狂四郎』や『岡っ引きどぶ(1972)』の町小路左門役などは余人に変えがたい。

 

柴田錬三郎:岡っ引どぶ(1968)講談社

 

例えば、映画『鳴門秘帖(1957)』長谷川一夫版は、看板役者のために撮られたといってもいいが、おそらく田村正和はこうした花形役者の系譜に連なる(最後の)ひとで、スーパーマンめいた(大時代的な雰囲気を持っていた)時代劇の剣客を違和感なく演じられる俳優ではなかったか。

 

その田村正和は『眠狂四郎ファイナル(2018)』の仕上がりに幻滅して引退を決意したとある。この作品は確かに殺陣は緩慢で老いを感じさせるものだったが、それ以上に脚本演出がひどすきた。私にとっての時代劇ヒーローの一人だっただけに、田村正和の死は寂しいものがある。心からご冥福をお祈りしたい。

 

眠狂四郎ファイナル(2018)の田村正和