コリン・デクスター Norman Colin Dexter(1930-2017)のモース警部シリーズは(海外の人気ドラマとして配給されたりして)気になっていた。このシリーズは英ミステリの最高賞・ゴールド・ダガー賞とシルバー・ダガー賞を2回ずつ受賞していて、ミステリ好きには外せない作品である。
モース警部は、仏ミステリの名物男メグレ警視(ジョルジョ・シムノン)を面倒臭くしたような人物、こんな人物が上司だったらたまらないだろうなといった感じで、部下のルイス部長刑事はなんとか大人の対応でコンビを組んでいる。モースとルイスは、いわゆるホームズとワトスンということに。
初巻から読もうと思ったが、一番分厚そうな『カインの娘たち(1995)早川ポケミス』から。まず、大学の研究員が刺殺されモースが乗り出した途端、捜査線上に浮かんだ容疑者が行方不明になり(というところまでで100ページほど)、パズル好きなモースは被害者が残したパロディ詩から女の影を見出すのだが…
細部にこだわりすぎて、時に単純な事件をこじらせることもあるモースの推理の行き着く果ては、いずこ? モノローグとルイス刑事や事件関係者との会話で紡がれる物語は穏やかに進行するばかりで、できればスコッチ片手に秋の夜長を過ごすに具合良い。実はこの本、図書館の除籍棚からいただいてきた。