ル=グウィン。暇なんかないわ | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 アーシュラ・K・ル=グウィン

 

アーシュラ・K・ル=グウィンが亡くなられて一年になる。SF・ファンタジーの女王といわれ「闇の左手」「ゲド戦記」の作者として知られる。そのル=グウィンのブログから編まれた最新刊のエッセイ「暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて(2020)河出書房新社」を図書館で見つけた。

 

 

昨年の今ころ、ル=グウィンの訃報が流れた当日、その知らせを知らないまま図書館の除籍本棚から(彼女の作品から遠ざかってずいぶん経っていたにもかかわらず)彼女の「世界の果てでダンス(1989)白水社」を手にするといった小さな奇跡があったが、その彼女のエッセイはフェミニズムのタフな論客ぶりを見せつける内容でちょっと驚かされた。

 

しかし、今回の「暇なんか…」はブログということもあるのだろうが、老人になることであったり、猫のパードのことであったりで親しみやすく気軽に読める。齢なんて気持ちの持ちようよ、なんて気安めは止めて。今までできたことが徐々にできなくなるってことよ。

 

 昼前の市内風景から

 

老人に気安めをいうのは止めて欲しい。現実否認は何の役にも立たない。誰の役にも立たないし、いかなる目的にも役立たない。あるがままにさせておいてあげてほしい。などと、彼女の語りは直截で硬質、素敵だ。やがて私にも孤独や静寂や退屈に、慣れる時間が必要になってくる。