菊池寛〈真珠夫人〉挿絵の鰭崎英朋 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 映画〈真珠夫人(1927)松竹キネマ〉の栗島すみ子

 

菊池寛の新聞小説〈真珠夫人〉は大正9年の6月9日から12月22日まで大阪毎日新聞、東京日日新聞紙上で連載され、同年映画化されたようだが wiki によると、キャストなどはっきりしない。そして栗島すみ子主演の(無声)映画はリメイク版、ブロマイドによると孔雀の羽柄の着物で、昂然たるヒロイン瑠璃子を演じている。

 

さて、策謀によって借財を背負った美貌の瑠璃子は、成り上りの金満家に嫁がざるを得なくなる。そこで瑠璃子は金満家を破滅させるべく結婚を決意すると、婉然たる姿を見せつけながらも肌身はゆるさず、復讐を開始。ただ(いくらも歳が違わない)継子奈美子にだけは心をゆるし幸せを願うが、計らずも二人は同じ人物を愛してしまう。

 

新聞連載 第64回(ユーヂツトその7)挿絵(右)

 

「妾はユーヂツトになろうと思うので御座います。 …妾は(金満家荘田勝平の妻になり)善人を陥れようとする悪魔を、法律に代って罰してやろうと思うのです」ユダヤの美姫ユデットが、謀って敵将ホロフェルネスの首を討つごとく、瑠璃子は悲嘆の淵にある父に向かって決然と、荘田との結婚を受け入れ復讐すると伝える。

 

新聞連載第1回(上)第44回

 

蛇蝎のごとき荘田勝平が「自分に婚を求めている。そう思う丈でも、彼女は悪寒を感じ」るほど。父はいまだ「どんな女も金で買える」と豪語する荘田の深い悪意を知らない。

 

新聞連載第80回(心の武装その7)

 

新聞連載第167回(夜の密語その6)

 

美奈子は自分が愛する青年・直也が、義母瑠璃子に求婚したことを知って激しく動揺する。

 

新聞連載第192回(破裂点その2)と第196回最終回(下)

 

瑠璃子はすべての男性(のもつ権力金力)に対して、唯一美貌のみを武器に挑戦し、美奈子のためには愛する直也をも欺いたが、そのことで彼女の心身は極度に張り詰め倒れてしまう。ついには死を覚悟すると、直也に「美奈さんを、貴方にお頼みしたいのです」と、直也に美奈子を孤児にしたくないとの願いを託して息絶える。

 

挿絵を担当したのは艶麗な美人画で知られた鰭崎英朋で、ごらんごとくにすばらしい。菊池寛「真珠夫人」新聞切抜きはすでに一組所蔵しているが、中折製本されていて挿絵が真ん中で分断されていたため、この度新たにもう一組(頑張って)手に入れた。これだけの英朋「真珠夫人」挿絵を見ることができるのは、このブログだけ(ですぞ)。呵々…