美少女美術史。鰭崎英朋の人肌観音 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 ウォーターハウス:金色の箱を開けようとするプシュケ模写

 

最近図像学的 iconography な出版が増えてきた。「美少女美術史」は文庫本のための書き下ろしで、このシリーズの4作目にあたる。「少女(子ども)」という観念が定着するのは18世紀末以降のことで、それ以前は「子ども(未熟な大人)」という認識だったようですので、当然〝子ども服〟なども存在しない。

 

わが国で〝少女像の誕生〟をみるのは近代以降、女学校による教育が始まって後のことですから、少女(という観念ができあがり)そこに社会的な価値が見いだされ、あるいはセクシャルな記号が付与されるのは明治時代の末期あたりからでしょうか。本文画像からウォーターハウスの作品を模写しました。

 

池上英洋,荒井咲紀:美少女美術史(2017)ちくま学芸文庫

 
ギリシアから近現代(バルテュスあたりまで)の少女像の図像から全体を(テーマ別に)簡単に概観したもので、ちょっと物足りない気がしますが、ともあれ文庫版なのですからいたしかたありません。200点ほどの名画を掲載したとのことですので「眺めるだけでも」難しくならないようにという編集方針なのでしょう。一晩で読めるので便利ですが。
 
 小島政二郎:人肌観音(1948)矢貴書店
 
 小島政二郎:人肌観音 表紙と扉 鰭崎英朋 挿絵
 
「人肌観音」は昭和12年ころ「主婦之友」誌上で連載され、同年末に衣笠貞之助、松竹によって映画化されていますので、その戦後出版ということになります。再版かどうかは不明。ただ、表紙絵が(ひいき筋の)鰭崎英朋で、比較的状態の良い本でしたのでお買い求めです。あまり見かけない部類です。
 
戦後は相撲絵を除いて、装幀画はがっくりと減りますので、英朋の晩年を伝える貴重な仕事といえるのかもしれません。本日届いたばかり。うれしい。