古書の森逍遥 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 NHK大河〝直虎〟の柴咲コウ

 

最近のドラマは時代劇も含めてほとんどコミック展開になってしまった。かなり前から映像作品の原作にコミック漫画が主流になっていたから既定路線ではあったわけだが、NHK大河「真田丸」が三谷幸喜脚本で持ちこたえたことで、この時点で〝正調時代劇〟は引導を渡された。

 

現在放送中の「直虎」脚本では森下佳子を起用して、すっかり少女コミック展開に持ち込んでいる。もちろん若い視聴者を念頭に、往年の大河ファンを切り捨てるという英断は悪くないと思う。残念だけどね。一方で倉本總「やすらぎの郷」で団塊シルバー世代をケアする動きもある。

 

団塊世代はその下の(私たち)世代を倍する人口を要するから、もちろん無視できるわけがないのだが、若くもなくシルバー世代でもない私たち中間層は映像視聴者のダーゲットから完全にこぼれてしまう。小学低学年でテレビに出会った私たちは(根っからの)テレビ好きなのだが、観るべき番組がないのだ。

 

 黒岩比佐子:古書の森逍遥(2010)工作社

 

テレビから遺棄された難民はいたしかたなく国境を越えて「古書の森」へ分け入ることになる。大衆小説も雑書もテキストして読むという方法は「古書の国」への越境には欠かせないパスポートで、最低限、テキストが書かれた年代、テキストで扱われている年代、書いた人物の時代背景などを時間軸にそって改めて再構成しながら「逍遥」するのである。

 

私とほぼ同世代ながら先年亡くなられた黒岩比佐子さんの「古書の森逍遥」は、彼女のブログを(生前に)再編集したもので、いわば越境者の達人による手引書でもあり、今でも折々参考にしている。もちろん現在でもブログは閲覧できる状態にあるので興味のある方はご覧いただきたい。まさしく「古書を古読せず。雑書を雑読せず」である。